逆らわない

絆創膏日記

  大事なことだなと思いながら読みました。

 

P131

 風が吹いても逆らわない

 

 木が風に揺れる時、僕の心も揺れ動く。

 わくわくする気分とは少し違う。見ているものに同化するような感覚なのだ。

 風にあおられ木の枝が右に左に上に下に動く様子は、まるで動物のように見える。

 風が吹くたび、ぐにょぐにょ、ぐにぐに、枝がしなる。こんなにも枝は柔らかかったのかと、僕は驚きを隠せない。目を大きく見開き、木を凝視する。

 植物は、人みたいに移動することが出来ない。風や動物によって運ばれた場所で生きるしかないのである。

 運命を天にゆだね、その日、その日を丁寧に生きる。

 地面に根を張り、虫や鳥を誘い、人の目を楽しませてくれる植物。陽の光と雨の恵みに支えられ、決められた場所で精一杯生きる姿は、りりしくたくましい。

 風が吹いても逆らわない。

 流れに身を任せることこそが、一番いい選択だと知っているかのように、枝は揺れ続ける。

 隣同士の枝でも、別々の動きをする。

 同じ風でも、どのような動きをするかは、それぞれの枝が決めることだからだ。

 折れなければいいのである。

 ばらばらに動くことが、命を永らえる行為に繋がっているのだと思う。