大事なことだなと思いながら読みました。
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風が吹いても逆らわない
木が風に揺れる時、僕の心も揺れ動く。
わくわくする気分とは少し違う。見ているものに同化するような感覚なのだ。
風にあおられ木の枝が右に左に上に下に動く様子は、まるで動物のように見える。
風が吹くたび、ぐにょぐにょ、ぐにぐに、枝がしなる。こんなにも枝は柔らかかったのかと、僕は驚きを隠せない。目を大きく見開き、木を凝視する。
植物は、人みたいに移動することが出来ない。風や動物によって運ばれた場所で生きるしかないのである。
運命を天にゆだね、その日、その日を丁寧に生きる。
地面に根を張り、虫や鳥を誘い、人の目を楽しませてくれる植物。陽の光と雨の恵みに支えられ、決められた場所で精一杯生きる姿は、りりしくたくましい。
風が吹いても逆らわない。
流れに身を任せることこそが、一番いい選択だと知っているかのように、枝は揺れ続ける。
隣同士の枝でも、別々の動きをする。
同じ風でも、どのような動きをするかは、それぞれの枝が決めることだからだ。
折れなければいいのである。
ばらばらに動くことが、命を永らえる行為に繋がっているのだと思う。