女の答えはピッチにある

女の答えはピッチにある:女子サッカーが私に教えてくれたこと

 いったいどんな内容?と気になるタイトル、面白い本でした。

 訳した方が、あとがきにこんな風に紹介してくれていました。

 

P259

 ここ数年、韓国の出版界では「ポスト『キム・ジョン』とも呼べる動きが続いていた。二〇一六年に発表されたチョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジョン』・・・が女性の経験する不条理の一大カタログだったとすれば、今はその不条理の一つ一つにどう向き合っていくか、答え探しが続いていることになる。

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 毎週コツコツと練習を重ね、うまく動いてくれない体に歯ぎしりし、公式試合に胸躍らせる。どうしたらサッカーがもっと上手くなれるかで頭がいっぱいの女性たちを描いた、体育会系エッセイ。本書はサッカーファンのみならず多くの読者に支持され、韓国オンライン書店YES24主催の「2018年今年の本」にも選ばれた。・・・「泣いて笑って感動しての無限ループ」「三ページに一回爆笑させられる」・・・などの熱い感想が上がり続けている。

 もちろん、普通にサッカーエッセイとして読んでも楽しい。だが、まったくサッカーを知らなくても何の問題もない。ページを繰るごとにじわじわと、「あること」に気づかされ、わが身のことと思えてくるからだ。あること。それは「誰かが、好きな運動を、思う存分やる。そんなことさえままならない社会に、私たちは暮らしている」という事実である。

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ロビングシュート」の章で描かれるのは、女性がサッカーの世界に足を踏み入れたら最後、決して避けることのできないマンスプレイニングについて。ある日の練習試合で、著者のチームは四十~五十代の男子チームと対戦する。・・・彼らは、女子チームのキャプテンであり元プロ選手、かつ元韓国代表に、実にどうでもいい助言をする。あげくの果てに「昔よりちょっと肉ついたんじゃないですか?」と、トレーナーまで紹介しようとする始末。・・・

 実はこのマンスプレイニングを、翻訳中訳者もずいぶん体験した。・・・周囲の「自称サッカー好き」の人間に質問して回った。そういう知人はほぼ男性で、その男性のほとんどが、私の「質問」よりも自分の「答え」に夢中だった。基本、言いたいことしか言わない。・・・得意げな彼らを前に、私は膝を打った。聞きたいことの答えは一向にわからなかったが、この章の一番の肝はわかった、と。対等とみなされず、あなたのための私にされる、この蝕まれる感じ。なるほど。これは不愉快だし、明らかにおかしい。

 本作には、マンスプレイニングを見越してサッカー好きの女子が独自のスルー法を会得していることも紹介される。だが、・・・キャプテンは正々堂々、実に優雅に、豪快に、男たちのマンスプレイニングの口をプレーで塞ぐ。面倒なことから逃げずに正面から突破しようとする勇気と、勝利を裏打ちする実力に胸が震える。そう、この本は目の前にたちはだかった壁に、持てるすべてを注いでぶつかっていくプロセスが描かれている。

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 ・・・このエッセイはひたすらサッカーについて書かれていると同時に、サッカーを比喩にして女の丸ごとの体、丸ごとの人生、丸ごとの世界をつづっているのだ。・・・