気持ちの力

わいたこら。 ――人生を超ポジティブに生きる僕の方法

ええ〜っというびっくりする話ばかり載っている本でしたが、このお父さんから受け継いだという「気持ち」の力の話も印象的でした。

P184
 親父は本業のほかに合気道の先生もしていたから、精神力とか、気持ちを大事にしていた。僕が、常に気持ちを大事にするのは親父の影響が大きい。
 あるとき、ものすごく頭が痛かったことがある。
 最初は、とにかく我慢していた。
 頭とかお腹が痛いとき、親父に訴えても、「痛いなんて言うな!気力で治せ、そんなもん」と言われていたから。
 でも、しばらく我慢していても痛みは全然治まらない。それどころか、ますます痛くなってくる。
 僕は、もう我慢できなくなって親父に泣きついた。
「今回だけでいいから薬をください」
 そうしたら、ボロボロの救急箱から薬を取り出してきて、1錠だけ手渡してくれた。
「ほれ、これを飲め。今日だけやぞ」
 飲んだら、1〜2分くらいでウソみたいに頭の痛みがなくなった。
「治った、お父さん!」
 そのとき、親父は何と言ったと思う?
「剛志、それは下痢止めの薬や」
 わいたこら!
 親父は、頭痛薬じゃなくて、僕に下痢止めの薬を渡したんだ。
「下痢止めの薬を飲んでも、お前は頭痛の薬だと思ったから治ったやろ?要は、薬なんてどうでもいい。気持ちで治る、と思っていたら何でも治るんや」
 これが正しいかどうかはともかく、そんな感じで育った僕は、「痛いから」「熱が出てるから」とかいう理由で病院に行くなんて、考えたこともなかった。
 ある日、今度はお腹が猛烈に痛くなった。
 ・・・
 3日目になって、「このままだと死ぬ」と直感した僕は、親父に「お腹が痛い……」と言った。
 ・・・
 親父は僕の様子を見て、さすがにヤバいと気づいたんだろう。僕を抱えて病院まで運んでくれた。
 ・・・
 盲腸の手術が終わったあと、親父は医者からこっぴどく叱られていた。
「なんでこんなになるまで放っておいたんだ!あと10分も遅れていたら、破裂していたぞ!」
 そんなこともあったけど、今でも僕は親父の教えを引きずっている。
 たとえば、僕は小学生のころから風邪を引いたことがない。
 関節が痛くても「ちょっと動きすぎたかな」で済ますし、熱が出ても「昨日暑かったから」と考えてやり過ごす。
 医者に行こうとか、薬を飲もうなんて一切考えない。だって、自分の中では「風邪」じゃないんだから。
 究極の話、ピストルを向けられる状況になっても、気持ちでなんとか生き延びられそうな気がしている。
 結局、すべては気持ちから始まるんだと思う。いいことも、悪いことも。