高野秀行さんの納豆探索、今回はアフリカと韓国が舞台でした。
いつも通り面白かった♪
この辺りは、名前は違えど、いずこも反応が一緒というお話です。
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・・・日本に暮らす移民の取材をしていたのだが、そのとき居合わせた日本人が実にしばしば、私の取材相手の外国出身者に「納豆は食べられますか?」と訊くのである。答えがイエスなら「わー、すごーい!」と大げさに感心し、ノーなら「まあ、無理もないですよね」とどこか優越感を漂わせる。納豆で日本人待遇をするかしないか決めているようだ。日本の納豆はいつからそんな権力者になったのか。
私はタイやミャンマーで納豆に出会っている。「納豆を食べる=日本人」はおかしいだろうと思い、そう言うと、彼らは一様に驚くので、私は一瞬、悪代官の手下たちを倒した水戸黄門のような快感を得るのだが、手下どもは反撃に転ずる。「え、それは本当に納豆なんですか?」「食べ方は?」「作り方は?」「納豆菌の発酵なの?」などなど。
・・・
こんなことが何度も続き、私はアジア諸国の「未確認納豆」を探しに行こうと決心した。納豆をめぐる混乱に決着をつけようと思ったのだ。だが、それ自体、納豆の陰謀だったのではないかと今になって思う。
二年あまりかけて歩き回ってわかったのだが、全く驚いたことに納豆は、中国南部から東南アジア内陸部、そしてヒマラヤに至る広大なエリアを牛耳っていたのだ。中国、タイ、ミャンマー、ラオス、ベトナム、カンボジア、ネパール、ブータン、インドがそうだ。
私はこれらの地域で食される納豆を「アジア大陸納豆」、略して「アジア納豆」と呼ぶことにした。
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面白かったのはアミヌさんとマーティンスさんに「日本にもダワダワがある」と言ったときの反応で、目を見開いて驚き、「ナイジェリアから輸入しているの?」と訊いたのである。大笑いしたが、思い返せば、日本でも「外国にも納豆がある」と言うと、少なからぬ人が「日本から伝わったの?」と訊くから考えることは同じだ。
納豆は自分たちだけが食べている臭くて美味い独特の伝統食品―。
アフリカ大陸の西側の民族とアジア大陸極東の民族が同じことを考えている。それがたまらなく面白い。
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「日本にもネテトウがあるんです」と私が言うと、マンボイさんたちは驚いた顔をした。
「え!セネガルから輸入してるの?」
「いえ、日本で昔から作って食べているんですよ。臭くてネバネバする」
「本当?信じられない!」
「名前はナットウって言います」
「ナットウ?ネテトウそっくりじゃない!!」
そう言って二人は笑った。日本人そっくりの反応だ。
・・・
夕食はパスタ。「今日はネテトウを食べないの?」と訊くと、「夜にネテトウは食べないよ」とマンボイさんは笑った。「だって、米は昼にしか食べなくて、ネテトウは米と一緒に食べるものだから」
米とセットなのか。驚くばかりだ。・・・