どの指がないかに意味があったのですね(;^_^Aこんな突撃取材もありました。
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ある初夏の昼下がり―そろそろ、次のライブに向けて新しいネタを作らなければと、追い詰められていた僕に、ワハハ本舗社長の喰始は言いました。
「次は刺青を取材してもらいましょうか」
「嫌です!」
「刺青=怖い」としか認識できない僕は即答したのですが、念のために「なんでそのテーマなんですか?」と聞いてみると、すごい答えが返ってきたのです。
「別に」
こうして強制的に、かつ恐る恐る始まった刺青取材は、なんと足かけ16年続いています。
今も取材継続中の大切なネタになっているのは、・・・「彫師」の方々の魅力に、つい引き込まれてしまったからなのです。
・・・
アポなしで来たにもかかわらず、こんなに親切に話を聞かせていただけるとは思いませんでした。せめて、この食事代くらいは僕が支払わなければ、と思ったのですが、当時も今も、お金にはまったく縁のない生活をしている僕です。せめて自分の分だけでも、と、恥ずかしながら皺くちゃの千円札を3枚、そっとテーブルの隅に置きました。
「てめえ、なんだこの金!お前みたいな貧乏芸人から、三代目彫よしが金をせしめたとなりゃ、看板に傷がつくんだよ!」
彫よしさんが、初めて会う僕を食事に誘ってくれたのにはわけがあったのです。
これまでも刺青について取材されるたびに、彫よしさんはちゃんと応じられているそうです。でも、電話取材では用件は伝わっても、熱量は伝わりません。
「俺に挨拶しに来た時、お前心底ビビッてたろ」
あ、やっぱりバレてたんですね……。
「顔みりゃわかるよ。それでも飛び込んできたお前の勇気を買って、飯ぐらい食わせてやろうと思ったんだよ」
無名芸人に対して、ここまで真剣に接してくれるなんて―僕は思わず感動してしまいました。
「いいか、これからは金は出さずに―顔出しな」
・・・
彫よしさんに会うために横浜に通っていたある日のこと。僕は気づいてしまったのです。左手に―人差し指がない。
もちろん理由を知りたい。でもおいそれとは聞けません。
・・・
いつもご馳走になっている飲み屋さんで、彫よしさんがいい具合に酔いの回ったのを見計らい、決死の覚悟で聞いてみました。
「あの、あの、そのひ、左手の人差し指は―なんでないんですか?」
・・・
やっぱり、よく聞くところの落とし前ってやつかな?だったら元極道?もし、そうだったとしても、僕は今の彫よしさんが大好きです!そう言おうと準備していました。
しかしこの答えは、予測できませんでした。
「ああ、これか?アライグマにかじられた」
「は?」
「アライグマにかじられた」
これが、本当の話なんです。彫よしさんの奥様は大変動物好きな方なのですが、20年以上前に、飼っていた・・・アライグマを檻に押し込もうとしたその時―。
「俺の指をカプッ!と」
極道の世界では、よく「指を詰める」といいますが、彫よしさんいわく、その詰める指にもそれぞれ意味があるらしいんです。
小指を詰めるのは仕事の落とし前。親指を詰めるのは博打の落とし前。人差し指は―女の落とし前。つまり、人差し指は、兄貴の女に手を出してしまったとか、女性関係の不始末を犯した者を、業界で晒し者にするために詰めるのだそうです。
これが彫よしさんには辛い。
彫師の仕事をされてますから、当然その手の業界の方も顧客とされています。その時、必ず彫よしさんの人差し指を見てニヤニヤしながら、「彫よしさんも若い頃は相当ヤンチャしてたんですね~」と言われるのだそうです。
「そのたびに、アライグマにかじられたと説明するのが情けない」