猫のマルモ

猫のマルモ

 動物を主人公に、童話仕立てで、あたたかいメッセージが届く本です。

 説明が難しいのですが、あったかさ、わかりやすさ、ウィットの利き方などのバランスが絶妙で、大宮エリーさんやっぱりすごい!と思いました。

 あとがきをご紹介します。

 

P266

 光の本になっているといいなと

 思っています。

 誰かにとって、救いになるような

 そんな本を自分が書けるなんて

 思ってはいませんけれど、

 書けているといいなという願いがこもっています。

 ・・・

 こんなにたくさん、素晴らしい本があるなかで、

 自分が何を書けるんだろう、と思いますけれど、

 困っている人、傷ついている人、悩んでいる人の心を少し

 温めることができたらいいな、勇気づけることができたらいいなと思って

 書きました。

 ひとつでもそういうのあるといいんだけど……。

 ・・・

 ただ、童話の体裁なので、

 ひとつのメッセージにしてあります。

 でも世界にはいろんな角度、

 そして立場というものがあります。だから、ここで

 少しだけフォローさせてもらっちゃおうかな、と思います。

 まずは、『猫のマルモ』なんですが、

 僕には才能がないって、悩んでいる人へ、書きました。

 才能って、なんだろう、と。評価って、なんだろうと。

 ・・・

 場所が変われば評価も変わる。時代が変わって認められる人もいる。

 なんとなく思うのは、好きなことがあるって、それ自体

 ものすごいことだし、生きる原動力になると思うのです。

 ・・・

 たとえば、コーヒーをすごく美味しく淹れる人がいたとします。

 そのコーヒーを飲むとみんな幸せになります。

 だから、みんなが、「あなた、コーヒー屋さんをやりなさいよ」

 と言うのですが、その人はやりません。たったひとりのために、毎朝、美味しいコーヒーを淹れ、その人はその子が淹れてくれたコーヒーを飲むと、とっても幸せな気持ちになり、毎日頑張れるのです。

 それは、もう、ひとつの才能ですよね。

 ・・・

 才能って、だから、あまたの人に認められたり、お金儲けできたり、

 そういうことじゃないんじゃないかなと思うのです。

 才能って、愛情なんじゃないかなって。

 相手を思いやる気持ちなんじゃないかなって。

 私はそう思っちゃうんだけど。

 ―見返りを求めない、力。ですね。

 ・・・

 あとはね、いつも、にこにこしていられる人がいて、その人は、

 誰かになにかしたいなという気持ちはないのだけれど、その人自体が、

 ひとりでとても幸せでなごやかなんです。

 その様子は、誰かにとってはとても真似できないもので羨ましいことかもしれない。人生を穏やかに生きる才能があるんだなあと思うかもしれない。

 みんなどこかで才能があるんですよね。きっと。それは自分が望んでいるものと違うかもしれない。それだけのことかもしれないですね。

 人には真似できない自分だけのオリジナルの力。

 それが才能なんじゃないかなぁと。

 自分を信じてあげると、それが見つかるのかもしれないし、

 自分を信じること自体を、才能っていうのかもしれない。

 だから、なにも成功すること、認められること、じゃないということを補足したいなって。