挑戦するという経験

アン ミカの幸せの選択力

  経験する道を選ぶこと、大事だなと。

 自分が挑戦した経験があれば、他の誰かを素直に認められるというのも、なるほどと思いました。

 

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 私が30歳で韓国に留学するかどうか迷っていた時、ある方の言葉に、強く背中を押されました。

 そもそも私が留学を考えたのは、両親のお墓を作るため、兄弟姉妹5人そろって初めて韓国・済州島を訪れたことがきっかけでした。韓国では両親や家族のルーツについても詳しく知りたいと思っていたのですが、その当時、私たちはみんな韓国語が十分に話せず、結局、あまり知ることができず帰国したのです。

 その後、両親が慣れ親しんだ言葉や文化をしっかり見るためにも、韓国に留学したい、という思いが強くなっていきました。しかし、・・・当時、私は大阪での仕事が増えつつあり、ある程度の安定がありました。

「韓国に行きたい。でも留学のために休んだら、きっと今ある仕事はすぐ若い子に取って代わられちゃう。どうしよう……」

 こんなふうに、今ある安定を手放す恐れと、全く新しい挑戦である韓国留学への思いの板挟みになった私は、ある尊敬する歌手の方に相談してみたのです。すると、その方がおっしゃったのです。

「アンちゃん、自分が人生の岐路に立たされていることに気づいたのに、動かなかったらきっと後悔するよ。自分が挑戦しないままだったら、同じ挑戦をして成功した人に出会った時に、その人を認められなくて妬むことになる。逆に、思い切って挑戦して失敗したんだったら、その挑戦の大変さや失敗の痛みがわかるから、『私も同じ挑戦をしたけど、あの人は成功してすごい』と人を素直に認められる人間になれるよ」

 私は、この言葉に勇気づけられ、留学を決意したのです。

 この方の言葉通り、自分が挑戦していれば、素直な気持ちで相手を称えられる人になれます。

 挑戦をあきらめることは、不安に負けているのと同じですが、「失敗してもいいから、とりあえず挑戦してみよう」と思って行動を起こせば、納得のいく結果が出なかったとしても、その挑戦は「経験」という宝にもなります。

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「挑戦したけど違ったかな」と思った場合も、「経験」から「工夫」と「知恵」が生まれ、これからの未来に活かしていく道具になります。ということは、やらない後悔より、経験する道を選ぶことが、幸せを選ぶ力と言えるのではないでしょうか。