とても参考になる本でした。この考え方を知って、しっかり自分のものに出来れば、すごいことだなと思いました。
P34
交渉では、自分とはまったく考え方も立場も異なる「異質な人」と話し合い、合意を結ぶことが求められます。
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最近、就職活動に取り組む若者の間では、会社を選ぶ際に、仕事の中身やそこでどれだけ給料がもらえるかよりも、そこで働く人たちの価値観が自分と共通しているかどうかが重視されるようになっているのです。
「仲間」という言葉は、時代のキーワードにもなっています。
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私も若い人が「仲間」を探すことはたいへん重要なことだと思っていますし、本書で述べる交渉も、それに大いに役立ってくれるはずだと信じています。
しかし、仲間探しには注意すべき点もあります。
ひとつは、SNSのようにごく狭い関心領域でつながった友人のなかにいると、どんどん自分の世界が「タコツボ化」(異文化との接触が断たれた状況になること。似た言葉に「ガラパゴス化」がある)していくことです。
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居心地の良い仲間同士で過ごすことには、別の危険もあります。
それは「自分と似た人間、同質な人間ばかりと出会っていても、大きな〝非連続的変化〟は生み出されない」ということです。
非連続的変化とは、たとえば馬車が自動車になったり、インターネットの発明によって情報の流通量がそれまでの何百倍にも高まるような、それまでの常識では考えられないような飛躍的な変化のことを言います。
社会を大きく変えるような発明や新商品を生み出すためには、この非連続的変化をいかに起こすかが大切となります。
アメリカのシリコンバレーや、数々のベンチャー企業を輩出するスタンフォード大学などは、まさに都市や大学が非連続的変化を生み出し続ける母体となっていると言えるでしょう。
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アメリカのハイテク産業で大きく伸びている都市の国勢調査を分析したところ、「同性愛者」(ゲイ)と「俳優や芸術家、デザイナーなどのクリエイティブな仕事に従事する人」(ボヘミアン)が多いことがわかったのです。
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・・・ゲイやクリエイター層の人々は、一般的に美的センスに優れており、他者への寛容の気持ちや文化的開放性をより強く持っているために、多くの才能や人的資本を惹きつけると言います。
また、非常に強く社会で差別されているゲイのような人々を受け入れる都市は、それだけ異質なものへの許容度が高く、多様性を持っているために、新たなビジネスやイノベーションが生まれやすいというのです。
「空気が読めない人」がマジョリティになる社会へ
私は、いまの日本社会も、これまでのような小さな仲間内で回る社会から、異質なものと出会って大きく変化していく社会へと、ゆるやかに移り変わろうとしているように感じています。
ちょっと前の流行語で「KY」という言葉が話題になりました。
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・・・なぜこの時代に「KY」という言葉が流行したのか考えると、違った文脈でこの言葉を捉えることができます。
誰もが世の中の「暗黙の了解」を自然に感じ取って、その通りにふるまっていれば、こんな言葉が流行る理由はありません。つまり、「空気が読めない人」が以前に比べてずっと日本社会で増え続けて、むしろマジョリティになりつつあるからこそ、この言葉が流行ったのではないか。
私はそう考えているのです。
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異質なもの、自分とは前提とする考え方や文化的な背景すらもぜんぜん違う相手と交渉して組んでいくことがないと、自分たちの仲間内だけの狭い世界でごちゃごちゃ縮こまって過ごしているだけになってしまう。
そんな場所からは、他の国や他の社会で生きる人を惹きつけるような魅力はけっして生まれません。
だから私は、若い人にできるだけ自分と「異質な人」と交流すること、そして仲間になることを勧めます。
そのときにも、「交渉の力」が必須となるのです。