ピーことば

ピーことば―ピーコの言葉

 10年位前の本で、マツコ・デラックスさん、吉行和子さん、奈良岡朋子さんとの対談も収録されていて、面白かったです。

 こちらはマツコさんとのお話で、お二人の声がそのまま聞こえてくるようでした。

 

P31

マツコ アタシね、男も女も、誰と会っても緊張しないんだけど。

 

ピーコ あなたに緊張は似合わないもの。

 ・・・

マツコ ・・・でも今日、こうして話していて、ゲイは別だって改めてわかったわ。

 

ピーコ 何それ?

 

マツコ ピーコさんだけには緊張するの。

 

ピーコ あら、そんなふうに全然見えないわ。緊張してないくせに。

 

マツコ してるって!初めて会った時のこと、覚えてる?

 

ピーコ 覚えているわよ。何年前だっけ。私があなたのところに行って、私、マツコのこと、好きですって言ったの。

 

マツコ ああ~っ、そんなこと言ってっ。全然、違うわよっ。ツツツって近づいてきたと思ったら、〝好きよっ、あんたのことっ!〟ってどすを利かせて言ったのよ。その瞬間、アタシの心臓がビクッと跳ね上がるのがわかったわ。会ったことないけど、お嬢(美空ひばり)と会ったとしたらこんな感じかと思ったわ。

 

ピーコ あら、そうだったかしら。まぁ、私はあの時から、マツコはこんなふうにブレイクすると思っていたの。だから今のマツコは予想どおりって感じね。マツコ的にはどうなの?今、いっぱいテレビに出ているじゃない。何か変わったこととかあった?

 

マツコ 何にも仕事がないときって、どうぞ日の目を見させてって、心の中で一所懸命、頼んでいたわけじゃない。それが今、かなったわけよね。注目をあびて発言する場所ができたわけ。で、何かが変わるかと思ったの、私も。でも、あきれるくらい何にも変わらないんだよね。言ってることも考えていることも。

 

ピーコ それって自慢?

 

マツコ あら、見た目のことじゃないわよ。

 

ピーコ 見た目のことなんて、言ってないわよっ。

 

マツコ 見た目は、20歳の時も綺麗じゃなかったけれどね。でも、もうちょっと変化がほしいと思うくらい、頭の中も、心持ちも変わらないの。……変化って面白いものじゃない。変わっていくことって。だから、これでいいのかなと思うことがある。

 ・・・

 アタシね、今年、40歳になるの。きれいごとで言っているんじゃなくて、それが今、嬉しくてしょうがないの。

 

ピーコ わかるわ。

 

マツコ これまで私がどんなことを言おうと、しょせん30代の人間が言う戯言だったわけよ。そのこと、すごく自分でもわかっていた。だから早く40代になりたいと思っていたわけ。もうすぐ40代になれると思ったら、早く50代になりたいって思い始めちゃった。

 

ピーコ 私も同じだったわ。37歳くらいで40歳って言ってたし。やっぱり年齢を重ねていくと、ものごとや人に対して、裏打ちっていうのかな、そういうものがあることを言えるようになる気がするわ。

 

マツコ なんだろ。やっぱり経験から出てきた言葉と、勉強したり想像したりして出てきた言葉って全然違うのよね。だから、これまではもどかしさみたいなものが、どこかにすごくあったの。

 ・・・

 六十になれば、若干は解消されているんだろうなと思う。自分の内心、気持ちの変化ってのも。そうであってほしいわね。

 ・・・

 60歳になってもなんにも変わってなかったらどうしよう。

 

ピーコ 60歳になってしゃべっていることが同じでも、それだけ積んできたことがあるなら、言葉の意味が深くなるわよ。そういうことが、年齢を重ねる素敵さなのよ。

 ・・・

 ・・・でも私だってもう67歳だから。

 

マツコ そんなふうには見えないけど。

 

ピーコ そう言ってくれる人もいるけど、やっぱり67歳なのよ。朝起きてベッドから下りて歩き始めると足がちちちっと痛いのよ。3歩くらい歩くと、あ、普通だわってなる。それは65歳になった頃からね。お風呂から出たとき、ちょっとどっかが痛いとか。そのたんびにこれって年っていうものねって思うの。それはどんなに若づくりしていたって、来るのよ。誰にでも。

 ・・・それで年をとっていくことを確認しながら生きていくことが大事なことだって最近は思うのよ。

 

マツコ 四十になったら次は五十、そして六十かぁ。

 

ピーコ そして次は七十よ。マツコもそこ目指して歩いていかなきゃ。

 

マツコ できるかしら。

 

ピーコ できる、あなたは!

 

マツコ ずいぶんきっぱりと。……じゃあ、できるってことでいいわよ、今日は。

 

ピーコ でも30年先のマツコは見られないわね。私、生きていないんだもん。

 

マツコ よいよいの97歳オカマもいいかもね。