旅が好きだ!

旅が好きだ! : 21人が見つけた新たな世界への扉 (14歳の世渡り術)

 旅が大好きな人が旅の何がいいのかを語った文章が集められた本です。今はこんな状況ですけど、やっぱり旅っていいなと思いました。

 こちらは、たかのてるこさんの文章から・・・

 

P51

 会社を辞めて、私はようやく、自分のことを大事にできるようになり、過去のすべてに感謝できるようになった。そして、人間の普遍的で根源的なテーマの本を書かせてくれたのも、旅で出会った人たちの存在だったのだ。

 今思い返すと、人生の岐路に立ったときに「ワクワクする!」方を選ぶことができたのは、学生時代、初めて海外ひとり旅に出たことがキッカケだったと断言できる。勇気を出して〝初めの第一歩〟を踏み出したことで、自分自身を縛っている〝限界のストッパー〟を外す感覚が得られた、といえばいいだろうか。「こんなこと私にできるわけがない」とか「これができない私はダメなんだ」とか、自分自身に制限(=呪い)をかけることは、全部〝自分イジメ〟なんだと、気づくことができたのだ。

 旅に出ると、生きることのひとつひとつに、ハンパない達成感が得られるようになる。たとえば、列車のチケットを買うにしても屋台で注文するにしても、初めはイチイチ戸惑って現地の人に聞きまくるものの、翌日には難なくクリアできるようになっている自分がいて、毎日「私、やればできるじゃん!」と自分をほめたくなる瞬間の連続なのだ。

 何が素晴らしいって、日常では、学校でも会社でも、先輩・後輩や上司・部下等、何かしら上下関係があるけれど、海外ひとり旅に出れば、年齢や肩書きなんか関係なく、〝ひとりの人間〟として、〝同じ人間〟として、フラットに人と出会えることに尽きる。

 そして、ニュースで知る世界はとてつもなく恐ろしく感じられたのに、〝実際の世界〟は優しさに満ち、旅先で本当に困ったときには、必ず助けてくれる人がいた。言葉や宗教が違っても「みんな、同じ地球で、同じ時代を生きる仲間なんだ!」と思わせてくれたひとり旅は、どんな学校よりも生きる術を学ばせてくれた、〝地球最大の学校〟だったのだ。

 私の思いは今も、初めて旅したときと同じだ。デビュー作の『ガンジス河でバタフライ』にも書いたのだけど、「世界中、どんな人も毎日、自分と同じように、ごはんを食べて、うんこして、寝て」を繰り返していて、「やっていることは同じ」だという事実。みんな、生まれてから死ぬまで、思い出を作り合っているだけなのだ。それならば、いろんな人と、いろんな場所で、楽しい時間をシェアしたい。やりたいことは、ただ、それだけだ。