これだけやってきて、こんなに新鮮な気持ちでいられるなんて、すごいです。
P278
部屋にいるときの大谷は、他のピッチャーの映像を見ることがよくある。時には、自身のピッチングも映像で確認する。そこで気づいたことを、すぐに試すときもあれば、イメージとして記憶に残して置き、ブルペンで試すことがあるのだという。
「試してみてダメだったらダメでいいと思うんです。こっちのほうがいいな、やっぱり違うなと、またそこで思えるので。八割が『やっぱり違うな』と思うときなんですけど、『いいな』と思うことが一割か二割あります。そのなかの〇.五%ぐらいの割合で本当にイメージがヒットすることがあります。こういうふうに投げてみよう、こういうふうに体を動かしてみようというイメージが実際の動きとマッチする。・・・」
そして、大谷は「そういう瞬間をずっと求めてやっている」とも言うのだ。
「その瞬間が、今日来るかもしれないし、明日来るかもしれない。もしかしたら、ある日突然に何かを摑む瞬間が現れるかもしれない。だから毎日練習をしたくなるんです。毎日毎日バットを振るときもそう、投げるときもそうです。もしかして、その瞬間が来るかもしれないと思って、いつもワクワクしながら練習に行くんです。たとえば正解というものがあって、今の自分がそれを試してもうまくいかないことがあるかもしれません。うまくいかないから『じゃあ、やめよう』ということもあると思います。ただ、物事の考え方として、たとえば試したそのときに筋力がなかったからできなかったと思うのか。または、自分の取り組み方が悪かったからできなかったと投げ出してしまうのか。その差は大きいと思うんです。本質を理解しているか、理解していないかの違い。たとえそのときに何かを摑めなくても、筋力をつければできるようになるんだと思って、さらにトレーニングを積むかどうか。そういうものが大事だと僕は思っています。・・・アスリートとして必要とされる要素や筋力はあると思います。その求められるものの幅が、僕の場合は広い。投げて、打っていますから。だから、基礎は大事になってくると思いますし、それがわかっている分、毎日練習をしたくなる。僕はただ、それだけなんです」