心と体を取り巻くもの

先日の「情熱大陸」に、聖路加国際病院で院内感染予防の仕事をしている方が出てました。

心強さを感じたり、応援したい気持ちや尊敬の気持ちがわいてきたり・・・私もできることを落ち着いてやろう、と思いました。

こちらからhttps://www.mbs.jp/jounetsu/26日(日)まで無料で見れます。

 

「病は気から」を科学する

 最後にあったまとめの文章も印象的でした。 

 

P384

 ・・・心と体のつながりの理解から得られる発見がもうひとつある。これを最後に残しておいたのは、単に健康や医療や社会に関することであるだけではなく、もっと基本的なものであるからだ。それは、人間であることの意味について何かを教えてくれる。

 結局のところ、科学が伝えているのは、人間は、ほとんどの人が考えているように、まわりの世界を受身的に体験しているのではなく、その体験をかなりの部分まで自ら構築し、制御しているということだ。「人の体は、情報の受け取り手であるだけではありません」と言うのは、プラセボ研究者テッド・カプチャクだ。「人は情報を作り出します」それは心理学者と神経科学者が、記憶や視覚など、他の領域で、すでに発見していることだ。記憶は忠実な記録ではなく、絶えず変化する産出物であり、人はそれにアクセスするたびに脚色し、書き換える一方、色や形の認識は、前の体験と自分が見たいと思っているものに大きく左右される。

 今では、この原則が健康にも当てはまることが明らかになっている。思考、信仰、ストレスレベル、世界観のすべてが、その人が病気になるか、元気でいるかに影響を与えるのだ。疲労研究者ティム・ノークスは、第4章で言っている。「脳が伝えてくることを信じる必要はない」

 しかし、ここで伝える本当に新しい考え方は、人の心は健康について、周囲の物質界の主観的な体験よりずっと多くのことを決定しているというものだ。例を挙げれば、遺伝子発現の変化、脳の配線の仕方、世界の見方といったものも、人の体を作る働きがある。つまり、人は自分の経験だけでなく、物理的現実をも構築する役割を果たしている。すると次に、物質的な身体の健康が心の状態に影響を与える。炎症は疲労うつ状態を起こす。低血糖値は人を短気にする。ゆっくりとした呼吸などにより、体を安定させれば、気分がよくなる。

 ・・・

 ・・・人間は、自分がそうありたいと思うほど、つねに客観的で合理的であるわけではないということだ。体だけでなく心も進化によって形づくってきたため、健康と生き残りを助ける信仰を抱くようになったが、それは必ずしも真実だったわけではない。強力な進化の力が、人に神や思いやりのある治療師の力を信じさせ、将来の見通しは実際より明るいと信じさせたのだ。皮肉なことに、その信仰が誤ったものだったとしても、役立つときもあった。体の調子をよくしてくれたのだ。

 心が生理機能に影響を与え、それを反映することを理解することで、人はようやくその逆説を解明し、錯覚ではなく、根拠に基づいた方法で、体と調和して生きていけるのだろう。