自我に邪魔されないように

天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常

 この、自我をなくすということ、わかるなーと思いました。

 

P150

 キャロル・キングアメリカのシンガーソングライターで、共作を含めるとポップスのヒット曲を百曲以上も作り、・・・

 ・・・作詞作曲を手がけるシンガーソングライターとしては、・・・成りゆきにまかせることを学ばねばならなかった。一九八九年のインタビューで、創作上の壁にぶつかることを避ける秘訣を次のように明かしている。

 壁にぶつからないために大事なのは、それを心配しないようにすることだと気がついたの。絶対に心配しちゃだめ。

 ・・・ただし、リラックスしてやらなくちゃだめ。自分の創造性は必ずそこにあると信じるのよ。・・・もし困ったことになるとすれば、・・・自分で自分の邪魔をしてしまう場合だけね。

 ・・・

 自叙伝によると、その秘訣は、潜在意識にせっせと仕事をさせて、自我には実権を握らせないことだという。「自我が支配しているときは、作品が自分から生まれる感じで、それでもいい仕事ができることはあると思う。でも、自我が支配的なときは、疑いが生じやすい。(それと対照的に)作品が自分を通してすっと出てくるときは、ふつうよりずっといいものになる」

 

P362

 コックスはジャマイカ生まれでニューヨークを拠点とするアーティストだ。・・・

 ・・・

 ・・・創作活動を続けるなかでひとつだけ変わらないのは、自我をなくすこと、少なくとも、そういう状態になりたいと願っていることだ。コックスの創作のプロセスは、実際に「無の境地」から始まると本人はいっている。「それは気を散らすものがいっさいなくて、自我に関わる考えがいっさい浮かんでこない状態のこと」だという。その際、なによりも追放すべきなのはネガティブな考えで、それはつまり、仕事において、無理やりなにかを起こそうとしないことだという。・・・

 

P388

 ビショップがデトロイトからニューヨークに来たのは十六歳のときだ。・・・イラストレーターになるつもりだった。・・・彼女は近代芸術運動と出会い、・・・油絵に転向して、・・・だが、その生き生きとした様をカンバスの上にとらえる満足のいく手法が見つかるまで、何年も納得できず、自己不信に苛まれる日々が続いた。ビショップはこう回想している。

「私はあらゆることを一生懸命に試していた。・・・―なにかがある方向から〝ひょっこり入ってきた〟かと思うと、別の方向へ出ていってしまう。結局それは自分が望んでいたものとはぜんぜんちがっている。それでも、自分の作品になにか有効なものが見つかるとしたら、それはそこに、つまり自分が意図してなかったもののなかに見つかるはずだった」