0円ハウス

TOKYO0円ハウス0円生活 (河出文庫)

 ずいぶん前、0円ハウスの本を目にしたままちゃんと読んでなくて、先日図書館で何気なく棚を見ていて見つけました。面白かったです。

 どういう流れでできた本かというと・・・

 

P3

「東京では1円もかけずに暮らすことができる。こんな街は他にないよ」

 驚くべきこの謎の言葉を聞いたのは2006年12月のことだった。場所は隅田川の川沿い。・・・

「ホームレス」

 と呼ばれる人たちが住んでいる。・・・

 オジさんは、

「鈴木です」

 とすぐ名前を教えてくれた。・・・

 ・・・

 簡潔に説明すると、僕は大学では建築の勉強をしていた。元々は設計・デザインを専攻していた。しかしそのまま設計事務所などで設計活動を始めて都市の中に建築物を作るのではなく、現在は路上生活者の家などを調査したりしている。その調査は、

『0円ハウス』(リトル・モア 2004)

 という本として出版されている。路上生活者の家の写真集なのであるが、僕はそれを総工費0円の家という捉え方で集めてみた。「ホームレス」なんかではなくて、レッキとした「家」だったからだ。

 ・・・

 やっぱり建築には興味がある。それは確かだ。しかし、それは建築家が設計したようなものに対しての興味ではない。むしろその真逆だ。デザインされているわけではないもの。つまり専門家が作ったものではない建築。いや、建築だけでなく生活や環境も含めた空間全体。それが、僕が気になっているものだ。

 そういう観点で0円ハウスを見てみると、専門家の特別なデザインよりも、人間が元から持っている本能的な生活デザインの方が、これからライフスタイルが変化していくであろう中で、多くの示唆に富んでいることが分かる。そして、鈴木さんの家や生活にはその中でも特に考え抜かれたアイデアが詰め込まれていたのだ。この本は、それを克明に記録しようという発想からスタートした。・・・