99歳

99歳、ひとりを生きる。ケタ外れの好奇心で (単行本)

 今年100歳であちらへ旅立った堀文子さんの本を読みました。すごいなぁ・・・と圧倒されました。印象に残った言葉を書きとめておきます。

 

P37

 年を重ねて、自由がだんだんそばまで来たような気がいたします。

 何ものにあってもおどおどしなくなるには、よほどの目にあわないとわかりません。

 打ちのめされて、必死で新しい道を探すたびに、今までの常識を壊し、少しずつ自由になってきたように思います。

 

P114

 八十二歳のとき、本物のブルーポピーを求めてヒマラヤを旅しました。

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 薄い空気の中での登りに頭がもうろうとして、もうこれ以上進むのは無理だと思ったとき、標高四千五百メートルのがれ場の岩陰に、草丈20センチほどの青い花が見えました。

 生きものの生存を拒絶されたような厳しい環境の中で、人目を避けるように、ただ一株だけ静かに咲いていたのです。

 ブルーポピーは、そこに他の株があれば、つぼみをつける前にあきらめて身を引くといいます。群れては全滅なのでしょう。人の手で育てられた姿とはまったく異質の花は、草花とは思えない孤高の存在でした。

 バラには茎にトゲがありますが、ヒマラヤの本物のブルーポピーは葉の裏にまでびっしり金色のトゲがあります。すべての生物を拒否して身を守っているのです。

 けれども、花だけは薄絹のように柔らかい。全身をトゲで武装し、身を守る神々しい姿に感動いたしました。