汗水たらせば

がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい! (徳間文庫)

 もっと感動的なお話がいっぱい載ってるのですが、ここは自分のために書きとめておきたかったところです。

 めんどくさいな~とか言ってないで体を動かそう、と思いました(;^_^A

 

P162

 七十八歳まで現役で働いたばあちゃんだったが、実は六十五歳の時、市役所の人がやってきて、

「おばあちゃん、ぼちぼち定年ですね」

 とおっしゃったらしい。

 掃除婦といえども、佐賀大学の準職員的な立場だから、市の管轄なのである。

 別に理不尽な解雇なんかではなく、正当な言い分なのだが、ばあちゃんは頑として首を縦に振らなかった。

「いいえ。私はお金がもらえなくても毎日、行きます。身体のために。どうぞ、クビにするならしてください」

 そう言われても、毎日、掃除に来られたら、給料を払わないわけにはいかないではないか。

 でも「身体のために」というのは、よく言ったものだと思う。

 ばあちゃんは、よく寝ることが最大の健康法だと信じていたのだが、

「汗水たらしたら、よく寝れる」

 と言って、身体を動かすことを苦にしなかった。

 バスで三十分かかるようなところにも、二時間かけて歩いて行ったし、仕事の生き帰りと掃除で、毎日、軽く6キロは歩いていた。言われた通り、六十五歳で仕事をやめてしまっていたら、スポーツ選手と同じで、急に身体がなまってしまったに違いない。

 ばあちゃんは、九十一歳で天寿を全うしたのだが、晩年の二年ほどは寝たり起きたりの繰り返しだった。

 ある日のこと。

 お見舞いに行くと、

「早く、お迎えに来て欲しい」

 珍しくしおらしく言うので、

「ばあちゃん、そんなこと言わないで、もっと長生きしてよ」

 と励まして家を出たのだが、ちょっとした忘れ物を取りに戻ってみると……

「一、二、三、四、……」

 そこには鉄アレイを手に、筋トレに励むばあちゃんの姿があった。

 本当に、どんな時でも身体を動かすのをやめない人だった。(?)。