鈴木ヒロミツさんの言葉

なめないでね、わたしのこと (幻冬舎文庫)

内館牧子さんのエッセイ、気楽に楽しく読み進んだら、文庫版あとがきに印象的な鈴木ヒロミツさんの言葉が載っていました。

 

P266

 先日、故鈴木ヒロミツさんの『余命三カ月のラブレター』をたまたま手にし、一気に読んだ。

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『余命三カ月のラブレター』は死の一週間前に行われたインタビューで構成されている。鈴木さんは宣告された「余命三カ月」がすぐそこに来ていることを十分にわかっている。ところが、その笑顔の何といいことか。インタビュー中の写真が載っているのだが、圧倒されるほどさわやかな笑顔だ。撮影は三月六日で、十四日には亡くなるのだが、ふんわりと死を受け容れている人間の笑顔とはこういうものなのかと思わされる。

 私はその写真と共に、次の言葉が強烈に印象に残った。彼は「死」を目前にして、読者に次のように語っていた。

「皆さん、これからの人生を、どうか楽しむために生きてください。愛する人と一緒にいたいとか、お金を稼ぎたいとか、人の役に立ちたいとか、人にはそれぞれの願いがあると思います。でも、目的が何であれ、笑って、笑って、腹の底から笑えるような人生を送ってほしい。僕はね、死を前にして、はっきりと思ったんです。人生というのは楽しいものだと。だから、どうか、楽しむために生きてください」

 この言葉を読みながら、きっと鈴木さんにとって六十年間は「アッ!」という間だったに違いないと思った。アッという間に過ぎ去った六十年間を振り返り、出会った人々を懐かしみ、家族や仕事や暮らしを思い浮かべた時、きっと一番大切なものが見えてきたのだと思う。

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 月日の流れは速い。

「楽しむために生きてください」が身にしみる。