「旅に出たナツメヤシ」が面白かったので、他の本もと思い、こちらも読んでみました。いろいろと違うところがありつつ共通点もあったり、こうであって当然、と思ってる事って世界中で違いそうだなと、思考が柔軟になる感じがしました。
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イネス・ド・ラ・フレサンジュという名が一気に有名になったのは一九八三年、カール・ラガーフェルドが彼女をメゾン・シャネルのイメージ・モデルに抜擢して以来。
父方は古い貴族の家柄。母はアルゼンチン出身の元ファッション・モデル。そんな環境に育ったイネスは、若い頃から「物言うマヌカン」として面白がられ、その後に自分の名前を冠したファッションブランドを立ち上げる。・・・
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さて、そのイネスが数年前にお洒落について一冊の本を書いた。題名は『ラ・パリジェンヌ』。冒頭に、パリジェンヌのDNA六カ条として以下の条件が挙げられている(以下、筆者による大変おおざっぱな意訳)。
曰く、パリジェンヌたるもの、
一 トータル・ルックには背を向ける
(全身ブランド固め、雑誌のコーディネートそのものなど、あり得ない)
二 アンチ「キンキラキン」
(いかにもお金持ちに見えるような格好、億万長者の夫の存在を感じさせるような格好は絶対しない)
三 人の知らない「掘り出し物」好き
(スーパーの片隅に素晴らしいお宝が埋もれていることを知っている。ウェイティングリストに名を連ねてまで高級ブランドバッグを買うなど言語道断)
四 自分にとっての心地よさを重視
(自分の体型やライフスタイルに合うもののみが心地よさをもたらすことを知っている)
五 憧れのロールモデルを持たない
(自分にとってのファッションアイコンは自分なのである)
六「よい趣味」なんてつまらないと思っている
(先入観、決めつけ、タブーから自由でいたいから)
これ、あまりに私自身の好みと一致するし、長年「パリでしかお目にかかれない」と思い続けてきたシックのあり方をとても上手に表しているので思わず、ごっそり引用してしまった。
このうちの五番、「ロールモデルなんて持たない」というところで、イネスはこんなふうに補足する。
<……とはいえ、スタイルのある女友達、歳を重ねながら、自分に固有のスタイルを今ふうに上手に変奏させつつ固持していけるような、そんな素敵な女友達のことは、尊敬せずにはいられません>
尊敬せずにはいられないけれど、でも真似はしない。なぜならそれは「彼女のスタイル」であって、「私のスタイル」ではないから。そこはものすごくはっきりしている。