手塚治虫さんについての本を読みました。
ご本人の言葉がたくさん載っている中、この「次の作品を見てください」が印象的でした。
P19
「今までの先生の作品で、一番のおすすめは?」という質問に、手塚治虫はこう答えました。
「次の作品を見てください」と。
同じ質問をされたとき、"Next One"と答えたチャップリンのように。
続けること。満足しないこと。いつも未来を見ること。
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「次々とアイデアがひらめく天才だったから言えた言葉だ」などと感じる人がいるかもしれませんが、手塚の身近にいた人間として、それは違うと私は思います。
もちろん、卓越した創造力や、絵を描くのが並外れて速いという技術的な才能による、絶対的な自信もあったのでしょう。しかし、それだけではありません。
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・・・人生には仕事以外にも、くじけそうになる厄介なことの連続です。手塚も、億単位の借金を背負い、自宅を手放すような苦境にも陥っています。
「もう手塚治虫は終わったんじゃないか」と、ささやかれていたような状況。
それでも手塚は机に向かい、ひたすら描き続けました。落ち込んでいるようなところは、見たことがありません。
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・・・手塚は貪欲でした。いくら褒められ、讃えられても、満足したり、地位にあぐらをかくことはありませんでした。何よりも、漫画が文化の端にも置かれないような状況を肌で感じ、どうにか変えたいと思っていました。
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「僕は描きたいんです。描くことなら、いくらでもある。子どもは未来を見ているから、子どものための漫画を描かなきゃいけない」
手塚は子どものことを、「未来人」と呼んでいましたが、「次の作品を見てください」と言い続けた手塚こそ、未来人だったのかもしれません。