相棒

いとしい人と、おいしい食卓 「食べる女」のレシピ46

このエピソードも印象的でした。

まさに相棒、時代を超えてつながってます。

 

P158

 相棒と初めて会ったのは仕事の打ち合わせ。作家(私)とカメラマン(相棒)。初めて見た瞬間、「おッ、私の最後を看取るオトコだ」といきなり、ごくあたりまえにそう感じた。打ち合わせは皆が忙しくてまたたくまに終わった。二度目の打ち合わせの時、また見て「このヒトとは同じ大地に体を横たえ、同じ星を見て、このヒトが風をよみ、水の在りかを教えてくれた。このヒト……いや、このヒト、私のそばにいた馬だった!」と強く感じたのだ。

 信じてもらえないかもしれないが、私には遥かなるDNAの記憶がある。幾世代かを私はジプシー(ロマ)の女で、群れから離れて薬草や鉱石を探していた。その傍らに、一頭の馬がいた。

 私が幼いころ、家にあった旧型の蓄音機からジプシー音楽が聴こえるとすぐにやってきて、熱心に聴いていたらしい。・・・

 幾星霜が過ぎ、DNAの記憶が蘇ったのかもしれない。やがて相棒になるオトコに私は懐かしさと哀感を感じた。乾いた大地で体を寄せて眠った記憶。で、付き合うことにした。名前や年齢を知ったのは後のことだ。だって私にとって、さして大事なことではなかったから。付き合って3ヶ月が過ぎたころ相棒が言った。「ボク、馬じゃなかった」「えッ、人間だった?」「まさか。ロバだったよ」。