メモのような

ジプシーにようこそ! 旅バカOL、会社卒業を決めた旅 (幻冬舎文庫)

 遠い国を旅したり、初めて会った人と話したり、読んだことのない本を読んでみたり、どんな方法でもいいので、いつも自分の固定観念を揺さぶって固まらないようにしておきたいなと、読みながら思いました。
 何か所か、印象に残ったところのメモです。

P334
 ・・・今日から新学期が始まるというので、村で唯一の小学校を見せてもらう約束になっていたのだ。
 ・・・
「私の受け持ちは一番下の学年なんだけど、今日は休み明けだから、10人の生徒がお休みね」
「16人中、10人も休んじゃってるの!?」
 日本でいうところの始業式の日だぞ?ったく、なんつーノンキさだ!

P355
 1週間前、この家に初めて来たときは、カティとどう接すればいいのか分からず、戸惑ったものだった。でも今、こうしてカティと一緒に夜を過ごしていると、たとえようもないほど心が安らぐ。・・・もしいつかまた、ルーマニアを訪れる機会に恵まれてカティと再会できたなら、私は故郷に戻ったような気持ちで、カティと思いきりハグし合うだろう。
 言葉も簡単には通じず、めちゃめちゃ深い話もできない。それでもカティと身ぶり手ぶりを使って懸命に話していると、「感情を伝えること」の大切さを思わずにはいられなかった。
 世界中、言葉は違っても、表情は世界共通なのだということ。ふだんのコミュニケーションは言葉に頼り過ぎているけれど、言葉が通じないからこそ、感情を記号化しないで済んだのかもしれない。百面相付きのボディランゲージには、言葉で言い表すことができない、たくさんの「カティらしさ」や「私らしさ」が詰まっていたから、私たちは言葉以上の「気持ち」で通じ合えたんだろう。

P363
 我が道をゆくジプシーたちは、自分の置かれている境遇はどうであれ、みな堂々としていた。豪邸を建てたお金持ちもいれば、明日食べる物もなさそうな物乞いもいたし、天性の才能を生かしているミュージシャンもいれば、住んでいる土地の言葉も話せない人もいたけれど、いつでも根拠のない自信に満ち満ちている彼らを見ていると、こんなふうに生きてもいいんだ!人はどう生きてもいいんだ!と思えて、なんだかこれから生きるのがラクになる気がする。
 ・・・
 移動生活を送ってきたジプシーは所有の概念が薄いから、領土や宗教を広めたいという欲もない。彼らのように、あらゆるモノに執着せず、「毎日、今日が一番大事!」で、「行けばなんとかなる!」と思えたなら、世の中どうあっても生きていけるだろう。
 雑草のようにたくましく、どんな場所にもタンポポのように咲くジプシー。
 異質であることを恐れない彼らを知れば知るほど、人からどう思われるかを気にして、"いい人"でいようとしていたことに、何の意味があるんだろうと思えてくる。
 ・・・
 ツッコミどころ満載で、私をびりびりシビレさせてくれたジプシー。差別されていようがド派手で、明日の生活にも困っているのにゲラゲラ笑っているジプシー。切り替えが早い、という言葉では済まされないほど、ジプシーは「今」を生きている。