プレイヤーが変わったような感覚、なんとなくわかるような気がします。
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「・・・ほんと太一さんは変わったね。まるで別人だわ……ねえ、ぶっちゃけ聞くけど、太一さんはさ、以前の世界とそっくりの別世界に還ってきたと言ってたけどさ、ほんとはそれだけじゃなくて、太一さんの中身も変わって還ってきてない?以前の太一さんとそっくりの、違う太一さんに入れ替わったみたいな。今日、会った瞬間にそう感じたんだ」
・・・
「あ……うん。じつは俺にもその感覚があるにはあるんだよ。だけどまだちゃんと確信がもてないんだよね。なんというか、『俺』というキャラクターを動かしているゲームプレイヤーが入れ替わったような感覚なんだ。テレビゲームでたとえるなら、ここまでのセーブデータをそっくり引き継いだ画面の中のキャラクターはまったく同じなんだけど、ゲームプレイヤーが変わればまるで別人みたいな動きになるだろ。たぶんそんな感覚なんだ。まだ自分でもうまく説明できないんだけど」
・・・
おそらく俺は、事故に遭う前とは違う、限りなくそっくりの別の世界にやって来たのだろう。ついでに言うと、限りなくそっくりの別の自分になってやって来たような感覚もある。
可能性の数だけ存在する世界、それがパラレルワールド。言い換えるなら、人それぞれの人生における選択と決断の数だけ存在している世界。
もしそれらの世界が時間も空間も超えて存在するのなら、過去の自分や未来の自分もまた、今この瞬間にもどこかに存在しているはずだ。
今この世界の自分、
別の世界を生きている自分、
過去の自分、
未来の自分、
あらゆる世界に存在する自分とはどこかで意識は繋がっていて、きっと「最善の今」を生きる道しるべを互いに共有し合っているのではないか、そんな気がしてならない。それが未来からのサインや既視感のような形で現れるのかもしれない。
そんなことを考えたとき、どこかの世界に存在しているもう一人の俺や、それぞれの世界で俺と関わりをもってくれた人たちにメッセージを送ってみようと思った。
「ありがとう。大丈夫だよ」と。・・・