元プロ野球選手の新庄剛志さんの本を読みました。
かなり面白かったです。
印象的だったところを書きとめておきます。
P3
わいたこら。
その事実を知ったとき、とっさに僕の口から出た言葉は、この、ちょっととぼけた驚きの九州弁だった。
驚いたり、呆れたりしたとき、故郷のみんなが思わず口にする、ビックリマークのような言葉だ。標準語で言い換えると、「なんじゃこりゃ」という意味に近い。
ものすごくびっくりしたせいなのか、なぜかわからないけど、ちょっと笑ってしまった。
思わず口にするまで、僕は「わいたこら」という言葉を忘れかけていた。
野球選手として、日本、そしてアメリカの中心・ニューヨークで大きな活躍をして、世間では「スポーツ界のファッションリーダー」とまで言われていた僕に、そんな〝どローカル〝な言葉を口にする瞬間が待っていたなんて!
怒り、悲しみ、寂しさ。「わいたこら」が何かの合図であったかのように、僕の中にごちゃまぜの感情が一気にあふれ出した。
裏切られた。
ものすごい額のお金を、最も信頼していた人に、騙し取られたんだ。
「やりたいことに思い切りチャレンジして、仲間と一緒に、毎日を全力で楽しむ」
そんなポジティブで、ハッピーな人生を過ごすことをモットーとしていた僕だったけど、さすがにこのときはドツボに落ち込んでしまった。
その後、ダメージを回復するのに、結構時間がかかった。
・・・
僕は、信用していた人にお金を使い込まれていた。
それも、100万円とか200万円のレベルじゃない。
20億円だ。
・・・
僕があの20億円を騙されずに持っていたら、その後に、どんな人生を送っていただろう。
20億円を持ってバリに移住していたら、でかいビルを買って最上階に住んでいたかもしれない。でも、きっと楽しくなかったはずだ。
ほしいものが簡単に手に入ってしまうというのは、あんまり楽しくない。お金がまったくないのもつらいけど、ありすぎてもつまらない。
どっちも経験した僕が言うんだから、間違いない。
冷静に比べると、フェラーリをポン!と買った日よりも、子どものころに親孝行して特別にショートケーキを買ってもらった日のほうが感動は大きかった。
・・・
裏切られたばかりのころ、僕は失ったものの大きさを毎日考えていた。
たとえば、札幌ドームいっぱいにドミノを並べて、「もうすぐ完成」というところで、一瞬気がゆるんだ隙にドーッと倒してしまったような気分。
でも、バリ島で元気を取り戻した僕は、だんだんこう思うようになっていった。
「俺、まだスタートしてなかったのかも。これまでの人生は、ただの助走だったのかも。助走で思いっきり飛ばしたりこけたりしたところで、それが何?」
スーパースター・新庄剛志の物語は、まだプロ野球選手として成功したエピソード1と、金銭トラブルでしくじったエピソード2が終わっただけ。
今、僕はエピソード3の途中を生きている。
本当に面白いのは、これからだ。