金銭トラブルの経緯はこんなお話でした。
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38歳のとき、僕の人生は一度終わってしまった。
僕は、それまで稼いできた20億円以上のお金を、ある人に使い込まれた。
使い込まれただけでも最悪だけど、もっと最悪なことに、やったのは僕が一番信用していた人だった。
今、思い出そうとしても、当時の記憶はほとんどない。
使い込まれたとわかってから、もう、何もかも信じられなくなった。
仕事なんて、とてもじゃないけど、やろうと思えなかった。できなかった。
朝、目が覚めて、全部がウソだったんじゃないか、と思う瞬間があった。でも、すぐに胸焼けと吐き気が混ざったみたいなものがこみ上げてきて、やっぱりあれは本当だったんだと気づく。
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当時の僕は、「信用している人にお金を使い込まれた」なんて誰にも言えなくて、たった一人で苦しんでいた。
後輩や友だちから、「ツーさん、飯でも行きましょう」と言われたりするのが、とてもつらかった。僕はいつも明るく見えるらしいけど、本当はそうじゃない。無理して格好つけてるときもあるんだ。
よく生きてこれたと思う。
よく乗り越えられたと思う。
いや、完全に乗り越えられたかというと、ちょっと自信がない。100%大丈夫と言えるほど、僕は強い人間じゃない。
でも、本当に少しずつだけど、前を向いて生きていこうと思えるようになった。
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僕が誰でも信じてしまうお人好しな性格かというと、そんなことはない。どっちかと言えば、逆に疑り深いくらいだ。
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疑り深いタイプのほうが騙されやすい、という話を聞いたことがある。一度、信用すると、とことん信じ切ってしまうからだ。まさに僕の性格に当てはまっている。
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家族みたいな人を疑うなんて発想は、これっぽっちもなかった。信じ切ったまま17年が経っていた。
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じゃあ、どうして金銭トラブルがわかったのか。
きっかけは、僕がCM撮影のために行ったバリ島をとても気に入って、移住を1日で決めてしまったことからだ。
マネージャーは、僕の性格にはもう慣れていて、たいていのことには驚かなくなっていたけど、さすがに焦っていた。
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僕は、いったん日本に帰って、いろいろ整理することにした。仕事をキャンセルする以外にも、やらなきゃいけないことがあった。
中でも、真っ先に会わなければならない人がいた。Aさんだ。
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僕はAさんに聞いた。
「今までいろいろありがとうございました。もうお金はこっちで管理することにします。で、今いくら残っているんですか?」
「2200万円」
Aさんは、当たり前のような顔で答えた。
何を言ってるんだろう?
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どう考えても、全部合わせたら50億円くらいは稼いでいるはずだった。
さすがに、稼いだお金の半分くらいが税金で持って行かれるのは知っていたし、僕もお金を使っていたから、今50億円もないと言われるのは納得できる。
でも、普通に考えたら20億円くらいは残っていないとおかしい。
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僕は家族みたいに信用していた人に裏切られた。そして20億円近くを使い込まれてしまったんだ。