ひかりのあめふるしま

ひかりのあめふるしま屋久島 (幻冬舎文庫)

田口ランディさんのエッセイ「ひかりのあめふるしま屋久島」を読みました。
ここは、印象的だったお友達とのやりとりです。

P194
「ねえ、トモちゃん。私、思うんだよ。私たちみたいな弱い人間がさ、霊的なものに立ち向かうときにはさ、自己表現っていう武器を持たなかったら発狂しちゃうって。自分を表現する何らかの手段をもっていたら、神秘的なもの、霊的なものに負けないで、それを通して自分を見つけることができるんじゃないかって。そう思うんだ」
「表現する手段?」
「だからさ、トモちゃんにとっての表現って、声でしょ?歌でしょ?私は書くことだけど、トモちゃんは歌うことだよね。だから、トモちゃんは歌を取り戻しながら、自分の前世と出会っていくんじゃないかなあ。逆に、歌わないと怖いと思う。自己表現できない人が霊的なものと向かい合うと、自分以外に表現を求めちゃうもの」
「宗教とか?」
「うん、宗教とか、偶像とか……。でもさ、この間、画家の横尾忠則さんにインタビューしたときに、彼が言ってたんだ。『自分らしくあれ』って。『どんどん自分をつきつめて自分になって、そしてそれを表現していくと、その表現は神の言葉になる』って。自分を表現しきると、そこに神さまが宿るんだって……」
「それって、すごくいい言葉だね、なんだか泣けてくるね」