いろんな生き方

ひかりのあめふるしま屋久島 (幻冬舎文庫)

こういう生き方もあるんだな、と思いました。

P202
 ケイ君は、毎年屋久島に来てカメの産卵ボランティアをしている青年だ。
 永田のいなか浜は、日本で一番のアオウミガメの産卵地である。年間2000頭ものウミガメが、わずか300メートルの幅しかないいなか浜の海岸で産卵をする。
 屋久島にはウミガメ研究会があり、もう10年以上にわたってウミガメの調査研究をしているが、そのメンバーのほとんどが全国からのボランティアで構成されている。ケイ君もその一人なのだ。ウミガメの調査は産卵時期の4月から7月までで、毎日夜9時から明け方まで行われる。夜、上陸して、産卵してから海に帰るまでの記録と、産卵したウミガメの大きさを測って前足に標識をつける。こうしてウミガメがどこを泳いで移動していくのかを調べるのだ。記録によると、フィリピンまで泳いでいたウミガメが2頭、捕獲されているとのこと。そのうちの1頭は平成6年の7月に2年ぶりにいなか浜に帰ってきて話題になったりした。・・・
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 ・・・事情を知らない観光客がやってきて、ウミガメが産卵のために海から上がってくると「きゃーカメよ、カメよ」と懐中電灯で照らしながら近づいたり、ストロボで写真を撮ったりするのだそうだ。驚いたウミガメは産卵せずにすごすごと帰ってしまう。・・・人の気配を感じたら、ウミガメは決して産卵しない。で、ケイ君は何をするかというと、夜通し海辺に立って、集まってきた観光客を1カ所に集め、ウミガメが産卵に上がってきたら、産卵を開始するまで観光客を待たせて、それからそおおっと、ウミガメを脅かさないように、観光客を導く……ということをボランティアでやっているのであった。
 ケイ君は毎年4月から7月にかけて屋久島にやってくる。じゃあ、他の時期は何をしているのかというと、この4カ月の資金を貯めるためにバイトをしているのだそうだ。つまり彼はボランティアが本業なのである。