知らなかったです

生命と記憶のパラドクス 福岡ハカセ、66の小さな発見 (文春文庫)


劇団ひとりさんが解説の中に書いていたのを読んで、そうだったんだ〜と思ったところです。

P252
 キリンの首が長いのは「頑張って高い場所にある葉っぱを食べようとしたから」というラマルクの説の方が一般的には持て囃されているようで、先生から聞いた話をすると一様に驚く。
 ここまでラマルクの説が広まっているのは、きっと親や教師が子供達に説明する際、その方が「頑張れば何にでもなれる」という教訓にもなりウケがいいからだろう。
 当然、僕も皆と同じくそのように教わっていたので、特に福岡先生の「全く非情なことながら、生物は目的を持って進化することができない」という言葉には驚かされた。

P98
 生物学者ラマルクは、たとえばキリンの首はなぜ長い、という疑問に対して次のような答えを用意した。キリンは高い場所の葉っぱを食べようといつも首を伸ばす努力を世代ごとにたゆまず続けた結果、あんなに首が長くなったのです。
 しかし・・・求めたり努力したりすればその能力を高めることはできる。たとえば筋力を鍛えたり、ゴルフがうまくなったり。しかしこのように獲得された努力の成果はその個体のみにとどまる。次世代に伝達されることはない。あるキリンが首を必死に伸ばすことはできる。しかしその形質を子どもに伝える遺伝的なメカニズムは存在していないのだ。
 つまり全く非情なことながら、生物は目的をもって進化することができない。努力して進化することもできない。つまりキリンは高い木の葉っぱが食べたいと望み、首を伸ばし続けたおかげで首が長くなれたわけではない。変化は偶然にしか起こらない。しかも無目的にしか生じない。だから長い年月のあいだにいろいろな首が現れては消えたはずだ。短い首。曲がった首。太い首。そして長い首。そのなかで草原の食糧競争から脱して高い葉っぱを食べることができた長い首の持ち主が選択された。