老けない生き方、暮らし方

達人 吉沢久子 老けない 生き方、暮らし方―軽やかに、自由に、自分らしく 「ひとり」を楽しみ、慎む

吉沢久子さんの本、続けて読みました。
こちらの本のサブタイトルに
軽やかに、自由に、自分らしく「ひとり」を楽しみ、慎む
とあって、いい言葉だなーと思いました。
ここは、自分は境遇も年齢も心境も違うものの、なぜか身に染みるような気持ちがして、読んだところです。

P25
「心の準備は十分にしていたつもりでしたが、やはり夫の死はショックでした。
 いちばん辛かったのは、一緒に映画を観たり、本を読んだり、旅行をしたりという共通の体験をしてきた人がいなくなって、たとえば観た映画の話ができなくなってしまったということ。それがとても寂しかった。
 姑と夫が逝って、ひとり残って……それまで、私はひとり暮らしをしたことがなかったんです。
 しばらくは、料理をする気になれませんでした。それまで夫が好きだから、姑が好きだからと考えて、料理をしていたことにも気づきました。
 自分のために料理を作ったことがなかったんです。自分だけだもの、何でもいいやと思ったり、面倒くさくなったりしてしまう。
 でもどうでもいいものばかり食べていると、心がささくれ立ってきて、ざらざらしてくるんですよ。
 半年くらいして、外で、柿とこんにゃくの白和えを食べたんです。これが本当においしかったの。もっと食べたくなったのね。
 でもお店で食べていて、おかわりをくださいとは言い出せませんよね。それで、自分で作ろうと思ったんです。
 これが再び私が台所に立つきっかけになってくれました。自分の食べたいものがあり、作る能力があれば、人に作ってもらうより自分が作らなくてはって、思えたんです」
 それから、見る見る元気が戻ってきた。
「支えになってくれたのは、食事と、そして仕事でした。何か打ち込めるものがあるということは、気持ちに張りをもたせてくれます。
 仕事ではなくても、大好きなこと、時間を忘れて夢中になれるもの。そういう何かを持っているというのは生きていく上で、とても心強いことではないでしょうか」
 ところで夫が亡くなってわずか1週間後に、大阪で講演の仕事があったという。
「以前からの約束だったので出かけました。ところが終了後に大雪が降って交通がマヒしそうになって。早く帰って夕食の支度をしないととあわてたのですが、ハッとしました。もう待ってる人はいない、私は自由なんだと気づいたんです。
 その時、家族がくれたこの自由というものを大事にしなければと思いました。もちろん、ひとりぼっちになって、寂しいし悲しいんです。でも、これから、こういう日が続くのなら、充実して生きなきゃ。過去を振り返って嘆いて生きるのか、前を見て今を大事に生きるのか、って考えたら、やっぱり後者を取ろうと思ったんです。・・・」