皆違って、皆同じ

小泉放談 (宝島社文庫)

美輪明宏さんとのお話、おもしろかったです。

P162
美輪 ・・・女というのは、強くてたくましくて、デンとしていて、ちょっと無神経なもの。「だって、しょうがないじゃない」とあぐらをかいて開き直れるのが、本当の女なんです。

小泉 ああ、私も「とりあえず、寝よう!」って、よく思います。何かが起こっていても、起きて気にしててもしょうがないから、寝て食べて明日に備えようと。そうでないと、戦えないし。

美輪 「矢でも鉄砲でも持ってこい!」ってね。だいたい、男が強くて女が弱いというのは、大錯覚にして錯誤も甚だしいですよ。私、弱い女なんて、これまで見たことない。

小泉 アハハ!逆の言い方をすると、私、自分より強い男を見たことがないような気が……。

美輪 アハハ。だから私は昔から言っているんです。男女の本当の姿はこうなんですよ、価値観を見直してくださいと。それが真理なんだということがわかれば、文句は出ないはずなんです。

小泉 男と女は、まったく別物だと思ったほうがいいですよね。そのほうが、お互いに相手を認めることができますから。

美輪 それは、男と女だけではありませんね。生きとし生けるもの、すべてがそうなんです。昔、川端康成さんや江戸川乱歩さんに「女のような顔をして、世の中の人から変態と言われたりする君みたいな人は、ふつうは自殺したりしがちだけど、どうして開き直って堂々としていられるんだい?」と聞かれたことがありますが、その時「私、半分は女ですから。でも、真理はこうだと思う」と申し上げたんです。つまり、動物でも植物でも、命あるもので一種類のものがございますか?と。
・・・
美輪 ・・・私が顔を上げて、胸を張って今まで生きてこられたのは、真理を大事にしていたから。常識じゃありませんよ。常識というのは、一夜明けると簡単にひっくり返るようなものですから、そんなものを信じていたら、ひどい目に遭います。昭和20年の8月15日を境に、すべての価値観が変わってしまったようにね。でも、真理はいつでも、いつまでも変わらないんです。
・・・
美輪 ですから私には、世の中にうらやましい人なんて、ひとりもいない。こう申し上げると、「それはあなたが才能や美貌をお持ちだから」って言う人がいますが、そうじゃありません。皆が違う、その一方で、皆、同じように悩んでいるんです。どんなに美しく才能豊かな人だって、イボ痔かもしれないし、便秘かもしれないし。

小泉 アハハハ!

美輪 妬み僻み嫉みというのは、まったく無駄なエネルギーですよ。そもそもそれは、自分に劣等感があるから抱く感情。それを払拭するためには、皆がお互いさまなんだということを、ちょっと思い出してみればいいんです。