失敗しないためでなく

宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由

「人が旅をするのは目的地に到着するためではなく、旅をするためである」というゲーテの言葉から、こんな話が紹介されていました。
ほんとにそうだなーと思います。

P156
 イタリアにロベルト・バッジョという有名なサッカー選手がいた。彼は一九九四年のワールドカップの決勝戦でペナルティー・キック(PK)を失敗し、それが直接的な原因となってイタリアは敗れた。当然、彼は猛烈な批判にさらされた。しかし、彼はそれをものともせず、こう言い放ったという。
「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持った者だけだ」
 十九世紀のイギリスに、アーネスト・シャクルトンという名の探検家がいた。世界中の探検家が南極点への到達の一番乗りを目指してしのぎを削っていた時代だった。彼は、自分の南極探検隊の隊員を募るために、次のような求人広告を打った。
「求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と称賛を得る」
 この求人に応募が殺到したという。なぜか。まさか帰還後の就職活動において有利になるためではあるまい。利益とリスクを定量的に評価し比較したからでもあるまい。何月何日何時に南極点到達、などというパッケージ・ツアーのように「成功予定時刻」が書き込まれた募集だったら、たぶん誰も応募などしなかっただろう。
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 ・・・失敗しないために賢く生きることにばかり気を取られ、「必勝法」なんぞを説いた本を読み漁るうちに、僕たちは少し頭でっかちになってはいないだろうか。・・・