有効なモチベーションはどんなもの?という話、興味深かったです。
そういえば松井秀喜さんも「好きならなんとかなる」って書いてたなと思い出しました。
P141
なぜその仕事に就いたのか―。そう質問された時にどう回答するかで、将来成功するかを予測できるという論文が発表されました。イェール大学のウルゼスニフスキー博士らが先月の「米国科学アカデミー紀要」で発表した論文です。
・・・
モチベーションは人によって様々ですが、心理学的には二つに大別することができます。内発的動機と外発的動機です。ウルゼスニフスキー博士らは、あえて「内部動機」と「手段的動機」と分類しています。彼らの定義のほうが明確ですので、ここでは後者に沿って説明しましょう。
内部動機はいわば純粋なヤル気です。「なぜ研究をやっているのか」と問われ、「宇宙の神秘に惹かれる」「生命の謎に触れたい」と答えるのがそれです。要するに、好きだからやっているわけです。
一方、手段的動機は具体的な目標に向かうものです。「出世したい」「金持ちになりたい」「賞を取りたい」などです。内部動機との決定的な違いは、他に代替方法があること。これらの目的を達成するためには、他にも手段があることに注意してください。・・・
一方、内部動機には代替がありません。自然の神秘を解き明かす研究をしたいのならば研究者になるしかないのです。・・・「そうする」ほかに、目的を達成するルートはありません。これが内部動機と手段的動機の決定的な違いです。
・・・
では、内部動機と手段的動機を両方とも持っていたらどうでしょうか。これを調べたのが、冒頭で紹介したウルゼスニフスキー博士らの研究です。
博士らは米国陸軍士官学校の士官候補生1万人以上を14年にわたって調査しました。・・・
まず、内部動機の強い人のほうが、弱い人よりも、1.5倍ほど将校にまで出世できる確率が高いことがわかりました。将校になった後に5年間仕事をやめずに継続できた人も2倍の数になりました。これは予想通りでしょう。ところがおもしろいことに、たとえ内部動機が強い人であっても、手段的動機を多く持っていると、将校になる率が20%も下がってしまうのです。
ヤル気を維持するためには、目標や夢は多いほどよいと、つい考えがちです。しかし実際は逆で、目標を多く掲げる人ほど、案外と仕事が長続きしないのです。自分の行動を理論武装で正当化する人は、そこまでして正当化しなくてはならない何らかの裏の真理が、本人にも気づかない部分に存在しているのかもしれません。理由はともあれ、「単に好きだからやっているだけ」という人が最終的によい成果をあげていることは確かです。
今回の論文は、「夢や目標を持て」と一方的に指導する現在の子ども教育のあり方に、一石を投じるものです。結局は、「好き」が肝心。好きに理由などないのです。