生きがいの話つづき

85歳のチアリーダー

なんか、こういう姿勢いいなと思いました。

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 私たちのチアダンスチーム「ジャパンポンポン」には時折、テレビや雑誌から取材依頼があります。先日もあるテレビ局から取材の申し出があり、スタッフの方が事前のリサーチのために電話をかけてこられました。
 ジャパンポンポンの活動など一通りのお話をした後、その方から、「滝野さんの生きがいはなんですか?」と聞かれました。
 老骨にムチ打って、それでも楽しくチアダンスを続けているのですから、
「私の生きがいはジャパンポンポンです!」
「チアダンスがあるから、こうしてイキイキと老後を過ごすことができます」
 という答えを期待されていたのだと思います。
 でも私、意地悪しちゃったんです。
「『生きがい』って言葉は外国にないし、言いませんよね」
「強いて言うなら、チアダンスかもしれないけれども、生きがいがなくても人間、ハッピーに生きていけるんじゃないですか?」
「生きがいなんてそんなもの、私、必要ないと思います」
 どうして、そんなに「生きがい」「生きがい」って言うのか。生きがいがないとダメみたいな言い方で、なんだか腹が立ってしまったんです。
 しかも、どうやらそのスタッフの上司が「生きがいについて聞いてこい」と言ったらしく、それも、なんだか釈然としなかったのです。
 もちろん、テレビ局が求めるようないい話をしようと思えばできます。でも、テレビに出るためにチアダンスをやっているわけではないし、自分を気持ち悪く飾り立ててまでメディアに出たいとは思いません。
 当然、そのテレビ局からはその後、一切音沙汰がありません。
 友だちからも「ポンポンは滝野さんの生きがいでしょ」と言われます。ほかにないから、「そうなのかもしれない」と思ったこともあるけれど、そんなこと、わからないのです。
 ポンポンをしていると楽しい。だから生きがい?
 私たちが踊ることで喜んでもらえて、うれしい。それが、生きがい?
 わからないですよ、そんなこと。
「これが生きがい!」って、はっきり言い切れる人は幸せだと思います。
 でも、メディアが決めつけるような「生きがい」をみんなが持っているわけではないし、そんなあいまいな「生きがい」に縛られたり、「生きがいがない」からと悩む必要はないと思うのです。
 自分のしたいことをして、楽しく日々を過ごして一生を終える。それでいいじゃないですか。