今度はオランダです。
改めて、いろんな国がありますね〜
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「あぁ、楽しかった〜。たっぷり身体を動かすと、ビールが呑みたくなるねぇ」
お店で自転車を返しつつそう言うと、陽気なカールがニコニコ顔で言う。
「お、ボクもビールが呑みたいと思ってたとこだよ。これから一緒に呑みに行く?」
「呑む呑む!でも、今ツアーが終わったばかりなのに、もう出かけられるの?残業とかは?」
「あるわけないよ。僕はいつでも自由さ。オランダじゃ、残業は禁止なんだ」
「残業が禁止!?それって、サービス残業が禁止ってこと?」
「サービス残業」の意味が分からないというカールに、「無給の労働」だと説明すると、青い目をパチクリさせている。
「信じられない!無給で残業させるなんて、現代とは思えない奴隷制だな。オランダじゃ、残業そのものが法律で禁止されてるんだよ」
「残業って、国が法律で禁止できちゃうモノなんだ!」
・・・
なんと、国際都市アムスの人口は、すでに半数以上が非西洋人なのだという。東京もいつか、そんな日が来るんだろうか。・・・
「移民が増えても、貧富の差が広がったり、犯罪が増えたりしないんだ?」
「欧州の中では貧困率が低いし、犯罪も少ない方だよ」とセムが言い、カールが続ける。
「なぜだか分かる?オランダに住む人が犯罪に手を出さないんじゃなくて、オランダじゃ、犯罪になること自体が少ないんだよ」
「ハッハッハ、その通り!マリファナも安楽死も売春も、この国じゃ合法だしね」
確かに、オランダで許されていることも、日本でやれば、即逮捕される行為なのだ。「自由」と「寛容」をモットーに国づくりを進めてきたオランダは、世界に先駆けて、画期的な政策を打ち出してきたパイオニア。・・・
・・・
「でもさ、自由には責任が伴うでしょ。たとえば、すぐそこの運河にも柵がないよね。日本なら『危険だから柵を』って話になるけど、この国じゃ運河に落ちても自己責任なの?」
私が聞くと、カールが当然!という感じで言う。
「もちろん、自由と自己責任はセットだよ。でも、たとえば運河に落ちても、僕らは溺れ死ぬことはまずないね。オランダの学校には『着衣水泳』の授業があって、子どもの頃から服を着たまま浮くトレーニングをしてるから、パニックにならずに済むんだよ」
ううむ、立札を立てたり柵を巡らせるのではなく、「水に落ちても溺れない人間にしてしまう」という発想がスゴい。
・・・
ラブ&ピースなカールたちといると話が尽きず、いろんな話がポンポン飛び出す。
「世界から争いをなくすには、どうしたらいいんだろうねぇ」とこぼすと、カールが言う。
「僕は、これからの世界は東洋にヒントがあると思うよ。人類は今まで何百年も西洋中心できたけれど、ガンジーの非暴力とかダライ・ラマの考え方とか、仏教的な考え方や東洋のアイデアは素晴らしいもの」
「ジョン・レノンがヨーコと出会って、名曲『イマジン』を作ったようにね」とセムも頷く。