変わらないもの

日本を飛び出して世界で見つけた僕らが本当にやりたかったこと

 こちらはイタリアで牧師さんをしている内村伸之さんの話です。

P73
「僕はよく、"マージナルな感覚"から脱しなければ、本物ではないといっています。僕もミラノに移り住んだ際、カブれました。最初の1年くらいはやけにイタリア人ぽくズバッとした物いいをしたり強く主張したりして、日本の友人たちに"イタリア人っぽくなったよね"と指摘されていました」
 マージナル(marginal)。本質とはあまり関係のない、その境界にいるありようを内村はそう呼ぶ。日本人でありながらイタリアを過度に意識し、イタリア人ぶって日本を理解しようとしてしまうあり方ともいえるだろうか。そこから脱却して初めて、日本とその土地のあり方を受け入れることができると、内村は考えている。
「マージナルな時期を越えると、少しずつですが、日本人でもない、イタリア人でもない、そんなアイデンティティみたいなものが生まれてくる。国や育った環境はみんな違うのに、家族や友人、愛など、同じような普遍的なことで悩んでいる。やっぱり嘘つかないヤツが信じられるよね、とか、根本的な価値観はどこの国の人でも変わらないじゃん、というのが見えてくるんです」