いいな

養老孟司vsテリー伊藤 私はオバサンになりたい! (宝島SUGOI文庫)

こういうシーンがあるっていいなと思いました。

P215
養老 ・・・僕の地元の鎌倉に1人の寝たきりの老人がいるんだけど、その人はとてもいいことを思いついたわけ。どうしたかっていうとね。その老人が寝ている部屋の窓を開けると、ちょうど路地の人通りが目の前にあるんですよ。それで、寝ているベッドを窓の高さにして、そこから顔を出すようにして外を見てるんだよ。そこで路地を通る人としょっちゅうしゃべってんの。これ、いい考えだなあと思ってさ。ヘタな介護士がつくよりも、よっぽど楽しそうなんだよ、そのじいさん。

テリー いいなあ、それ。見事に生きがいがあるよ。そのおじいさん、自分で歩いてる人に声をかけるんですか?「おーい」って。

養老 そうそう。通る人もお互いにね。そうやって近所の人ともしゃべっていられるし、顔を出していれば、お互いに何か一言いいたくなるでしょ。すばらしくオープンな病室ですよ。しょっちゅう知らない人も通るけど、むしろそれがいいんです。「おお、きょうは美人が通ったぞ」とかって。

テリー テレビを見てるよりいいよね。テレビだったら、きょうは何があるかってわかっちゃうけど、美人はいつ来るかわかんないから、それは楽しいよね。

養老 そうそう。「きょうはだれも来ないな」っていう日もあったりね。そうやって、毎日、楽しみにしてるの。どうして他の人は、ああいうふうにしないんだろうって思ったぐらいに楽しそうなんだもん。