気候と体形

養老孟司の旅する脳

養老孟司さんのエッセイです。
長いしっぽがしもやけになるとか、体形とそういうことが関係あるという思考をしたことなかったなと思ったところです。
最近スタイルのいい子が多いのは、温暖化と関係あったりして?

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 ・・・手足が長くて八頭身というのも、今の美人の条件だそうだが、そもそも人の体形は、その土地の気候に適応して変化してきているのだ。寒冷地に適応したモンゴロイドに属する日本人にあてはめるのは、無理があると言わざるをえない。
 アフリカに行くとわかるが、八頭身の人はたくさんいる。暑い気候に合わせて体表面積を大きくしているのだ。体から熱を逃さないと、熱中症になってしまって暮らせないから、手足が長い人が多いのである。手足が短く、ずんぐりした体形のモンゴロイドには、アフリカのような気候はつらい。
 逆にアフリカ人が寒い土地にいたら、手足のしもやけが大変だろう。僕は昔、東南アジア原産のカニクイザルを飼っていたことがあるが、冬になると、長いしっぽからしもやけになってしまって、かわいそうだった。ニホンザルのしっぽが短いのも、日本人の足と同じで、環境に合わせて短くなったと考えられる。
 人類発祥の地はアフリカだ。アフリカから長い時間をかけて今のように世界に広がったことを考えれば、八頭身は古い体形、胴長短足は移動先に適応した新しい体形ということになる。何も今さら古いほうの"美"の基準に合わせなくてもいいのではないか。