それぞれの立場

自閉症のうた

 すごく理解しやすい説明でした。

P59
 結婚については、人類が繁栄し続けるためには、とてもいいシステムではないかと考えています。愛する人と結ばれて家族になるということは、幸せに違いありません。けれども、出会った頃の気持ちが死ぬまで続くのは、難しいのが現実ではないでしょうか。
 この人と一生を共に過ごすと決め、みんなに祝福してもらう。それは、人生における一大イベントだと思います。結婚という約束を交わし、家族として生きることを公に認められれば、社会において、それなりの責任を果たさなければなりません。子供を育てるためにも、家庭があった方がいいのでしょう。
 結婚そのものについて、僕はこんな風に考えていますが、僕自身は今のところ、結婚したいとは思っていません。理由は、僕が障害者で日常生活もままならないせいではなく、誰かと一緒に暮らすことを、あまり望んでいないからです。
 僕は、これまで特定の人に、恋愛感情を抱いたことはありません。これは、たぶん僕が自閉症であるかどうかとは関係ないと思います。誰かに特別な感情を持つことなく一生を終える人は、それほど珍しくはないような気がします。
 恋をしたことがないというと、かわいそうに思われるかもしれませんが、そうでしょうか。
 例えば、自閉症者が見ている世界を、みんなは知りません。
 流れゆく水を見れば、僕の体は魚になり、水中を滑るように泳いでいるみたいな感覚になります。自分の意思とは関係なく、風が吹けば大空を羽ばたく鳥になり、光を見れば咲き誇る花になってしまうのです。
 普通の人からすると、見ていて切なくなるような状態かもしれませんが、僕にとっては、生きる喜びを感じる時間となっています。
 自閉症だから感じる体験を、普通の人ができないからといって、僕は、それをかわいそうだとは思いません。みんなには、みんなの楽しみや生きがいがあるとわかっているからです。