病気とは

病の神様―横尾忠則の超・病気克服術 (文春文庫)

このエピソードも超人的です(^_^;)
「いいことも悪いこともひとつだと思っていて」というところは共感して読みました。

P60
 全ての病気が人間の心や意識と深く結びついているとはいえないまでも、少なくとも大部分の病気はその人間の心や意識が創造した架空の非健康体なのではないだろうか。
 言ってしまえば病気なんてないんだ。病気だと思っている状態は、実は仮の姿で本人が無意識に病気を求めているのではないかとさえ思えてくるのである。
 例えばこんなことがあった。
 初めて外国に行くことになった前夜からぼくは高熱にうなされていた。アムステルダムに向かう飛行機の中でも熱は一向に下がらない。空港から病院へ直行することを覚悟していた。アムステルダムに早朝着いてタラップの上に立った瞬間、「外国の匂い」がプーンと鼻をついた。生まれて初めてかぐ外国の匂いである。一生、外国になど行けないと思っていた一九六四年のことだ。行けたとしてもこれが最初で最後だと心に言い聞かせてヨーロッパの土を踏んだその時は、全身に新しい血が注がれたような感動があった。そして高熱はタラップの上で一瞬にして下がってしまったのだ。
 このことはどう解釈すればよいのでしょう。とにかく自己から解放された気分であった。

P75
 ぼくは十年ごとに交通事故に遭ったり、大きな怪我をしてきたが、その都度生活や作品に大きな変化をみてきた。
 病床にいる時はつらいけれども、その苦痛の期間がなければ成長もなかったと思えば、人間をやっていくためには、苦痛や危険はつきもので、受け入れるしかない。
 われわれの人生は、常に寸善尺魔であり、悪魔や毒も上手く利用すれば天使にも薬にもなると思った方が生きやすい。いいことが連続するとかえって落とし穴があるとテレビで脅す霊能者達がいるけれども、暗示にかけられてしまうのはよくない。ぼくはいいことも悪いこともひとつだと思っていて、いつの間にか両者が入れかわっていることさえあるので、あんまり気にしないようにしている。