メンタルの蓋をとる

本気になればすべてが変わる 生きる技術をみがく70のヒント (文春文庫)

松岡修造さんといえば、この話が下書きしたままになってたのを思い出しました。
メンタルの蓋、これさえとれたらすごい力が内から出てきますよね(^^)

P196
 日本には、世界ナンバーワンのテニスプレーヤーがいます。北京パラリンピック車いすテニス男子シングルスで、全試合ストレート勝ちで金メダルを獲得した国枝慎吾さんです。
 車いすテニスは、コートもラケットもボールも一般のテニスと同じです。唯一、ツーバウンドまで認められるという違いはありますが、その動きはじつに速い。僕も競技用の車いすに乗ってみましたが、反転しやすいように作られているため、まっすぐ進むだけでも難しい。それを常に動かしてプレーするので、国枝さんの腕の太さは僕の二倍はあります。
 国枝さんは一時、「親に遠征費の負担をかけたくない」と、引退を考えました。しかし、所属クラブが専門のスタッフを揃えて後押しし、遠征費は母校の大学が全額支援、職員として仕事も与えてくれました。サポートを受け続けるためにも、世界の頂点に立ちたい―。
 そこで国枝さんは、相手がミスをするまでボールを拾いまくる従来のプレースタイルをまったく変えて、バックハンドのダウン・ザ・ラインというショットでエースをとっていく攻めのスタイルをめざしました。このショットは、世界で数人しか使いこなせない難度の高い技です。特に車いすでは、少しのズレもミスにつながります。リスクの大きなこの技を確実に成功させるために、北京までの四年間、何万球というボールを打ち続けました。
 メンタル面では、みんなが静かに食事をしているレストランで、「俺は最強だ!」と大声を発する特訓を課せられました。初めは恥ずかしくてたまりませんでしたが、これで“メンタルの蓋がとれた”状態になり、海外でも自信をもって戦えるようになりました。
 こうして迎えた北京の決勝では、「何万球も打ってきたんだ、思い出せ!」とプレー中に叫びながら、渾身のダウン・ザ・ラインを決めた瞬間、「見たか!」とガッツポーズ。いつもはクールな国枝さんも、コーチと抱き合って泣きました。