自分自身、やったこともないのに何でこんなに野球好きなのかなと不思議ですが(笑)
野球の魅力について書かれていたところです。
P84
・・・長嶋監督と対談した折・・・最後はこういう話だった。
「長嶋さん、今、何かスポーツをはじめようかという少年がいたとします。やっと歩きはじめた年頃です。その時、長嶋さんはやはり野球をするようにすすめられますか」
「はい。そんなにちいさな年頃なら、野球というよりも、まずキャッチボールをしなさいと言いますね。キャッチボールはただボールを投げ合っているように見えますが、あの中でいろんなことを学ぶものなのです。お互いにいいボールを投げ返す。受けたボールをまた相手に返してやる。こういう協調し合う感覚って言うんですか、そういうものをキャッチボールは自然と覚えられるんですよ。あの中で人生のさまざまなものが学べるようになっているんです。野球の面白さ、魅力はキャッチボールにあるんです」
P116
・・・私はヤンキースタジアムで見た、デレク・ジーターの、あの一塁キャンバスまで全力疾走するダイナミックな走りと、唇を噛んで必死に走り抜けるあの表情を思い浮かべる。
どんな平凡なゴロでも、"ヤンキースの宝"と呼ばれる、このスターは全力で走る。だからイージーな内野ゴロのほとんどが、間一髪の判定になる。・・・
打った瞬間、ホームランの手ごたえがある時以来、ジーターは全力で走る。
・・・
「おい、今のランニングを見たかよ。もう二塁まで行ってたよ」
私はジーターのランニングを見て、正直、驚いた。メジャー・リーグを代表するスター選手(年俸二十二億六千八百万円)が、平凡な内野ゴロであれ、外野フライであれ、歯を喰いしばり、キャンバスの上の野手を倒さんばかりに走って行く。・・・
―野球で走ること、ベースランニングとはこんなに魅力があるのか。
私はジーターのプレーに感激した。
さらに私を驚かせたのは、彼の守備であった。
ジーターの守るショートへ平凡なゴロが飛んだ瞬間、スタンドがどよめいた。ジーターが捕球し一塁へ投げてアウトになった時、またスタンドが沸き上った。
―何だ?このスタンドの興奮は?
ファンがジーターの守備を見に来ているのだ、と気づいた時、拍手の中で凛として立つ若者が"ヤンキースの宝"と呼ばれる訳がわかった気がした。
―これと同じ雰囲気が以前あった気がする。何だったのか?
あっ、そうか。先頃ジャイアンツの監督を退いた長嶋茂雄の現役時代の守備に対するファンの興奮と同じだ。
―そうか、メジャーには、あの現役当時の長嶋茂雄が何人もいるのか。