NHKつながりで?有働由美子さんの「ウドウロク」を読みました。
ここまで書いてくれちゃうところが、この方の魅力かな?と…
そしてなんか安心して笑えるようなところも…
たとえばこんな詩のような一話がありました。
P68
情けないある日
エレベーターホールの前。
紙袋は、某スーパーの二枚重ね。
中には、ファイルにもとじられずにばらばらと入った資料と(どうせ読めればいいから)、いただいた地方産の地ビール。
お土産をくれる人もわかっている。
一人暮らしには、違う種類を二本。
紙袋が、やぶれかけている。
ああ、この前、雨の日にも使ったやつだ。
私、どのくらいの割合で、スーパーの紙袋を使ってるんだろう。
まあ、どうでもいい。
どーせ誰が見ているわけでもない。
帰宅するのは、自前のマンションだけど、部屋は散らかっている。
しかたがない、水曜日までは重要な仕事が山積みだから。
それが終わったら、片付ける予定だし。
どーせ、誰に見せるわけでもない。
仮に誰かが来たとしても、これは私のマンションだ。
ローンは私が払っている。
パソコンや、書類や、読まなきゃいけない本や、ハンドバッグや、筆記用具が散らかる食卓に小さなスペースをあけて、チンした、お土産の油揚げを置く。
あわてて食べて、唇にあたる。
油揚げだから、熱い。
あーこりゃ、明日、唇、腫れるかも。
まあ、もういいわ。どうせ化粧でごまかせるわ。
唇より、目の横のシミのほうがイタいし。
焼酎が底をついた。
買いに行く暇もない。
いや、毎日飲むから早く減っているだけだ。
でも、酒が無ければとっくに仕事をやめていたか、やめさせられていた。
酒で、いろんなこと忘れたフリをしてきたおかげで、今、自分がいる。
油揚げだけでは足りない。
もうあと一時間で寝ないと。
でも、お腹すいた。
今日一日、すごくがんばった。
誰も褒めてもくれないし、誰かを養うために働いているわけでもない。
自分のためでしょ。グチるなんて贅沢よ、と世間の大半の人から言われる。
だから、自分しか自分を褒められない。
しかも、たまの褒め殺しなんかにあわないくらいの知恵は持ってしまっている。
ウブな、いや、バカな二十代のころみたいに、人の褒め言葉を全部信じられたら、どんなに幸せか。
そうめんゆでちゃった。
寝る前だけど、一束だからいいか。
あ、お風呂はいらないと。
早く寝ないと。