やさしさ

ヨシダ,裸でアフリカをゆく

こういうやさしさを持っていたいものだ…と我が身を振り返ってしまいました(^_^;)

P129
 サタデーマーケットを歩いていると案の定、子供たちから「Give me money!」と、たかられた。こういう子供たちはエネルギッシュ過ぎるので「デハ ネニ(私は貧乏)」と返しては逃げていたのだが、ラリベラの子供たちはかなりしつこい。どんなにお金がないと言って逃げても、平気で2時間、3時間と追いかけてくる。・・・
 ・・・少年は私と目が合うと、少し考える様子でベイユーの袖を引っ張って、ベイユーに話しかけ始めた。
 ・・・話を聞き終えたベイユーは「この子からの伝言なんだけど"僕たち本当に貧乏なんだ。助けて"って言ってるんだけど、どうする?」と、持ちかけてきた。まあ、想定内の内容である。アフリカではよくある話なので「私も超貧乏でベイユーにいろいろ世話してもらってて、お金が本当にないんだ……って、伝えておいてよ」と、深く考えずに返事をした。
 私の言葉をベイユーから受け取った少年は少し考え込んでいる様子だったのだが、突然、大きな声で怒り出したのだ。その瞬間「金くれ」と騒いでいた子たちもピタッと静まった。
(よくわからないけど、私、少年を怒らせちゃったのかな……)
 なんだか気まずい雰囲気になってしまった気がして、少年がなぜ怒ったのかをベイユーに聞くと「この子はナギに怒ったんじゃない。ナギにお金をくれと言っていた子供たちに怒ったんだ。彼は"この白人は僕たちと同じ貧乏なんだ!だから、この子を苦しめちゃダメだ"って、怒ったんだよ。彼は、ナギを守ってくれたんだ」と、なんとも予想外の言葉が返ってきた。
 少年は私の手をギュッと握った後、
「貧乏なら、僕ん家でごはん食べよう!
 僕ん家も貧乏だけど、インジェラならあるから、
 それでもよければお腹いっぱいになるまで
 食べていって!遠慮はいらないから!」
 と、言ってくれたのだ。(*インジェラは、エチオピアの主食。テフというイネ科の植物をパンのように発酵させたクレープ状の食べ物)
 少年の純粋なやさしさに、私は一気に胸がいっぱいになった。
 その後、少年が私と話をしたいと言ってくれたので、ベイユーを介してお互いに少しだけ自己紹介をした。少年の名前はタジボ。年齢は9歳。・・・