「教科書に載った小説」という本を読みました。
タイトルの通り、編者の佐藤雅彦さんが中・高の教科書から選んだ小説が12本載っています。
あー懐かしい、読んだ読んだ、と記憶にあるものも、初めて読むものもありました。
意外な面白さでした。
あとがきにはこんな風に書かれています。
P194
・・・おそらく、有名な小説なら放っておいても読む機会は生まれるかもしれないが、私が教科書の中に見つけた小説はそれではなかった。面白さ、独自さ、という点では秀でたところにありながら、ともすると人の目が向かない場所に置かれているものは、どんな世界でもあると思うが、私が目にした小説もそうであった。
・・・
・・・これら小説群が、おなじ立ち位置を保持していることに気が付いてきた。そして同時に、子供の頃、勉強部屋で夢中になりつつも、誰かに見られている視線のようなものが、僅かながらに感じられていたというナイーブな感触までも思い出すことができた。
その立ち位置や視線がどこからどういう理由で生まれて来るものなのか言語化するのは難しいが、敢えて言うなら、「誰かが、人が育つ過程に於いて通過させたかった小説」とでもなるのだろうか。成長する道程に置いておくので読んでほしい、というかすかな願いが、これらの集合から感じられたのである。