ちょうどいい幸せ

一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い

これだけ長生きの方から聞くと、より深くそうだな〜と思います。

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 ほどほどに、まあ、八十代の平均寿命をまっとうして、なるべく病気をせず丈夫で、お金もほどほどにあり、人に迷惑をかけない。そういう人生がいいだろうと、非常に常識的な一つの典型をつくることはできます。
 しかしそれが人間のほんとうの幸福かというと、その人が幸福と思えば幸福ですが、ああつまらない、退屈な人生と思えば退屈です。
 私も長く生きて、いろんな人に出会い、いろんな人の人生を見たり聞いたりしてきましたが、どういう人の人生がいちばん幸福だったのか、いくら考えてもわかりません。たとえば、あの人は素敵な人だったと思うけれども、その人の妻はどうだったかというと、苦労させられたのかもしれないと思いますし、この人は立派で尊敬できる人だったけれど、その人の子どもはどうだったかというと、親と比較されて悩んだ様子でしたし、いいことずくめの人は見つかりません。・・・
 一方で、豊かになれば人は幸せになれると、人類共通して思ってきましたが、それもまた違ったようです。私もずいぶん裕福な人を見てきましたが、裕福だから幸福だとは思えませんでした。かといって、極度な貧乏もまた不幸です。
 それなら、一体どうしたら、人にとって一番幸福なのかと考えると、わけがわからなくなります。・・・
 自分の心が決める以外に、方法はないと思います。この程度で私はちょうどいい、と自分の心が思えることが一番いいと思います。ちょうどいいと思える程度は、百人いたら百人違います。
 私はまだ足りないと思う人は、いくらあっても足りません。・・・
 これくらいが自分の人生にちょうどよかったかもしれないと、満足できる人が、幸せになれるのだろうと思います。