「あなたのいばしょ」、とても大切な活動だなと思いながら読みました。
あなたのいばしょ | 24時間365日無料・匿名のチャット相談
P50
間違いなく言えるのは、F先生がいなかったら僕は生きていないし進学もしていない。いまの活動もしていないということです。
先生は社会人を経て教職に就いた人で起業経験があり、そこで得た生き方や考え方などを僕に語ってくれました。
先生の言葉で、いまも大切にしているのが「過去に悲観的になるのではなく、これからの人生を自分がどう生きたいのかを考えなさい」という言葉です。
それまでの僕は、今日を生きるのに精一杯で、将来について考えたこともありませんでした。だから、最初そう言われたときは、正直どうやって考えればいいのかよくわかりませんでした。でも先生は、授業でも僕個人に対しても、ことあるごとにそう話すのです。
「自分はいったい何がしたいのだろう」と考えたとき、頭に浮かんだのがバイト先で出会った人たちです。
一緒に働いていた人のなかには、親に虐待されている高校生もいれば、家の事情で出生届を出してもらえず戸籍のない人もいました。大学進学の学費のために働いている20代の人もいました。みなそれぞれに深刻な悩みや問題を抱え、必死で生きている人たちでした。
彼らと出会ったことで、苦しいのは自分だけではないと初めて知りました。また、そんな彼らとともに過ごすことで自分自身を肯定できたような気がしました。そして、社会が抱える問題を初めて意識したのです。
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大学で学ぶうちに、当初の目的は「孤独に苦しむすべての人のために」という思いに変わっていきました。学費の調達などさまざまな問題にぶつかりながらも、僕は2020年、大学3年生のときに、友人に声をかけて2人でNPO法人「あなたのいばしょ」を設立しました。
相談の手段としてチャットを選んだのは、電話にあまりなじみのない若い世代に気軽に利用して欲しかったからです。また必要なときにいつでもつながれるように、365日24時間受付できる体制も最初から整えました。・・・
P163
ここまで、人生の主人公として生きるために、自分の気持ちを整理し、認めていこうというお話をしてきました。
しかし、この本を読んでくださっているみなさんのなかには、「いまの自分は苦しくて、そんなことを考える余裕なんてない」「毎日ただ生きているだけで精一杯だ」という人もいるのではないでしょうか。
昔の僕自身も同じで、ただその日一日をなんとかやり過ごすことに必死でした。そんな日々のなかで、僕は「生きている意味があるのだろうか」「生きる意味とは何だろうか」と、とことん考えました。
人は、苦しいときや悲しいときに「自分はなぜ生きているのだろう」「生まれてきた意味は何だろう」と考えます。
楽しいときや嬉しいときでなく、つらいときにそう考えるのは、なぜでしょうか。
それは、生きる意味があると思えれば、自分の感じている苦しみにも意味を見出せるから。つまり、苦しみを「正当化」できるからです。
僕は毎日苦しさしかなかった頃、「生きている意味は何だろう」と子ども心に一生懸命考えました。でも一人で堂々巡りを繰り返し、自分を追い込んでいくだけでした。
だから、生きる意味なんて考えなくていい。僕はいま、そう考えています。
その意図について、これからお話ししたいと思います。
あくまでも、これは僕個人の考え方です。・・・もしあなたが「生きる意味を探さなければ」「なぜ生きているのかわからない」と悩んでいるのであれば、「そんなものは、なくてもいいですよ」と伝えたいのです。
なぜなら、生きる意味を無理やり探そうとしなくても、自分の人生をしっかり生きていくことができるからです。
もっと言えば、毎日起こる出来事を味わいながら生きること自体が、僕たちの「生きる意味」だからです。
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・・・いまは、何かを成し遂げたり目標を達成したりすることが、人生の意義であり、生きる意味だという考え方が一般的に広がっています。そしてその考え方が、ときとして人を苦しめる結果になっています。
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「生きる意味」を、夢や人生の目標という言葉に置き換えてもいいでしょう。
僕たちは小さな頃から、「人生の目標を見つけよう」とか「夢を叶えて充実した人生にしよう」と言われ続けてきました。
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もちろん、それはすばらしいことですし、遠くにある夢や目標を追いかけるのもひとつの生き方です。しかし、それを無理やり見つけることが目的になると苦しくなってしまいます。
繰り返しになりますが、生きる意味や人生の本質とは、自分が日々選択して、いまやりたいと思う身近なことをやり、生きていくことだと僕は思います。
だから、もし違和感があるのなら、敷かれたレールにそのまま乗っていくことが必ずしも幸せとは限らないし、無理やり夢を探そうとしなくてもいいのです。
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情報網が発達したいまの社会では、目に見えることや人から評価されやすいこと、たくさんの共感や賞賛が得られることに意味があると考えがちです。
しかし、・・・
朝学校へ行って授業を受け、友達と何気ない話をしたり遊んだりして一日を送る。そうやって「いま」という時間をただ生きることが大切であり、その連続が人生になっていきます。
