「成立させたいという回答が最も多かった法律案ベスト3は、ユニバーサル・ヘルスケア(国民皆保険制度)、週4日労働、ユニバーサル・ベーシックインカムの3つだ」ほんとうに、早くそうなって欲しいと思います。
P8
・・・人生にはすばらしいことがたくさんある。休暇に出かけるのも、友だちと遊ぶのも、ごちそうを食べるのも、そのすべてがすばらしい。でも、自分のメンタルヘルス(心の健康)によくない仕事を辞めた経験のある人は、どれくらいいるだろう?
まだ辞めていないという人には、この本が何かのきっかけになればと願っている。・・・どうすれば自分が生き生きと活躍できる仕事や職場を作り上げることができるかが本書のテーマなのだ。
P10
「arbejdsglæde」は北欧系の諸言語、つまりデンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語、アイスランド語にあるが、世界のほかの言語には、私が知る限り、これに相当する単語はない。探した中でいちばん近いのはエストニア語の「töörõõm」(テーローム)で、これは「働く楽しみ」あるいは「ふだんの仕事でちょっとした喜びを見つけること」という意味らしい。
・・・
アーバイツグレーゼは、いい考えというだけではない。その効果はデータをとおしてはっきりと現れているようで、実際デンマーク人は、仕事をめぐる幸福度では常に世界トップクラスに位置している。・・・デンマーク人の58%が、金銭的な理由で―例えば宝くじで1000万英ポンド(日本円で約20億円)を当てて―もう働く必要がなくなっても仕事は続けると回答しているそうだ。
P22
・・・調査会社ギャラップによると、仕事に精力的に取り組んでいる人は世界中で20パーセントしかおらず、62%パーセントは「静かな退職」をしていて、仕事にやる気がなくなっている。「静かな退職(Quiet quitting)とは、「仕事で求められる最低限のことしかせず、絶対に必要な分以上の時間や労力を注ぎ込まないこと」をいう。残りの18パーセントは「騒がしい退職」つまり仕事への関与を積極的に断つ行動を取っている。
P46
私が初めて「スマイル・ファイル」のアイデアを知ったのは、ルビー・レセプショニスツという会社が2015年に雑誌「フォーチュン」で「アメリカで働きたい中小企業」の第1位に選ばれたときだった。当時この会社はさまざまな取り組みを実践していて、その1つとして、新採用の従業員に「スマイル・ファイル」と名づけたノートを渡し、同僚や顧客、上司からほめられたら、そのことをこのノートに書き記すよう奨励していたのである。ほめられた内容を、ノートに書いたり、パソコンやスマホのフォルダーに保存したりしておいて、仕事がうまくいかない日に見直すのは、お金はかからないし、手軽だし、それに何より役に立つ。
・・・私たちは、自分で自分をいちばんひどく批判することが多いし、ほめられたことよりも批判されたことを、ずっとよく覚えているものだ。だから「スマイル・ファイル」は、ほめられたことを忘れないようにするのによい方法だ。
P70
デンマークでいちばんフラットな組織は、コペンハーゲンに拠点を置く2002年創業の建設会社ロギーク社だろう。この会社に上司はいない。会社の戦略は全従業員がいっしょに決める。全員が最高幹部であり、入札に参加するかどうかや、どの資材を使うか、さらには、会社の経営が苦しくなったら誰をレイオフするかに至るまで、みんなで議論する。レイオフの議論では、一部の従業員が自ら自宅待機を申し出ることもあれば、みんながいっせいに減給に応じることもあるだろう。ちなみに給料は、大工も経理担当も関係なく全員が同額だ。従業員はだいたい55人で、売上高は6000~8000万デンマーク・クローネー平均すれば約800万英ポンド(日本円で16億円)である。社会的責任を積極的に果たしていることでも知られていて、過去に失業した経験のある人をたびたび採用している。
この会社の話は、多くの人にとっては現実のものと思えないかもしれないが、・・・世界一幸せな人のように働きたいのなら、まずは、そうした働き方は実現可能だと信じなくてはならない。
P89
よく「人は職場を去るのではない。上司のもとから去るのだ」と言われるが、この言葉はデータからも裏づけられるようだ。仕事検索サイト「トータルジョブズ(Totaljobs)」の調査によると、イギリスでは49パーセントの人が上司を理由に仕事を辞めた経験がある。・・・
P117
転職もデンマーク人が上位にランクされる分野の1つで、・・・デンマーク人はとても頻繁に転職する。そしてこれも、仕事で幸福を感じている原因なのかもしれない。「今の仕事が気に入らない?なら辞めちゃえよ」と言うのがデンマーク人だ。時給で働くパートタイマーなどを除くサラリーマンだけに注目すると、デンマーク人が転職するまでに1つの会社にとどまる年数は平均7.2年だ。ちなみにイタリア人は平均12.2年、フランス人は10.8年、ドイツ人は10.2年である。
P176
・・・偉大な哲学者―ではなく、俳優ジム・キャリーの言った言葉が結局は正しかったのだと気づく。彼は、こう言ったのだ。「誰もが金持ちになって有名になって、やりたいと夢見ていたことをすべてやればいいと思う。そうすれば、これが答えではないと分かるから」。
P179
「成功していること」の意味は、「自分のしていることに好感を持っていること」であるべきだ。実際、いい仕事をすると最高の気分になる。幸福とは、成功の究極の形なのだ。
P208
2017年、フィンランドは2年を期限として、ある実験を開始した。政府は、もし人々に、生活に必要な最低限の金額「ベーシックインカム」を何の条件もつけずに支給したら、どうなるだろうかと考えた。・・・
この考えは新しいものではなかった。スペインのバルセロナ市、アメリカのストックトン市、ブラジルのマリカ市、韓国の京畿道などが、ユニバーサル・ベーシックインカムの実験を行っている。しかし、全国規模で実施したのはフィンランドが初めてだった。
フィンランド政府は、当時失業中だった人々から2000人をランダムに選んだ。それからの2年間、選ばれた2000人は、毎月560ユーロ(当時のレートで約7万3000円)の現金に加え、全員に認められた住宅手当330ユーロ(約4万3000円)を自動的に支給された。つまり、合計で毎月890ユーロ(約11万6000円)を受け取ったのである。
これは、ぜいたくな暮らしができる金額ではない。フィンランド人の手取り所得は、就業者の場合は毎月平均2400ユーロで、学生の場合は約1000ユーロだ。それでも、月890ユーロというのは、倹約生活を送れば働かなくてもやっていける額だった。
ランダムに選ばれた2000人が実験群で、それ以外の、通常どおりの給付を受け続けた失業者たち全員が対照群だ。
予想では、ユニバーサル・ベーシックインカムを受けている人の方が、役所での煩雑な手続きに煩わされずに済むので、就職したり起業したりする割合が高くなるだろうと期待された。実験の結果は予想どおりで、実験群の人の方が対照群の人より雇用される割合が高かったが、その差はほんのわずかでしかなかった。
いちばん大きな違いが見られたのは、実は幸福度で、際立った上昇が見られた。実験が終わった時点で、ユニバーサル・ベーシックインカムを支給されていた人は幸福度が10点満点で平均7.3点だったのに対し、対照群は6.8点だった。0.5点は大きな違いと思えないかもしれないが、人生への満足度は大きく変動しないことが知られている。例えば前にも触れたとおり、結婚によって人生への満足度は上昇するが、その差は平均およそ0.5点だ。またユニバーサル・ベーシックインカムを支給されていた人は、対照群の人と比べて、より健康になり、ストレス、悲しみ、憂鬱、孤独感のレベルが下がった。
私としては、今後もっと多くの国で政府が同様の実験をする英断を下し、もっと緻密なセーフティーネットを整備して、人々が思い切って起業したり芸術家を目指したりできるようにしてほしいと願っている。コペンハーゲンのハピネス・ミュージアムでは、よく来館者に「もしあなたが自分の国で幸福担当大臣になったら、どんな法律を成立させますか?」と質問している。・・・成立させたいという回答が最も多かった法律案ベスト3は、ユニバーサル・ヘルスケア(国民皆保険制度)、週4日労働、ユニバーサル・ベーシックインカムの3つだ。
