ベーシックインカムの給料制度

社会を変える学校、学校を変える社会

 植松さんの実践されていること、印象に残るところがたくさんありました。

 

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植松 僕は評価がものすごく嫌です。だから、基本的にうちの会社でプラスに評価する部分があるとすれば、どれだけ新しい人と会ったかと、どれだけ新しいことをやったかということですね。後はうちの会社の給料は基本的にその人の家族構成とかを基に決めていて、生活するのに困らないだけの給料を払うようにしてるんです。

 

工藤 「ベーシックインカム」ですよね。・・・こんな考え方があるのかと本当にビックリしました。

 

植松 僕は日本の給与体系には問題があるように感じています。日本では「時間給」を制度にしている会社が多いです。でも、時間給は「誰がやっても時間当たりの成果が同じ」仕事の時だけ有効です。時間給では「人より頑張ると損をする」ことになります。だから、仕事の能率を上げるモチベーションが生まれないです。・・・「能力給」にも問題があります。この制度だと、家族が病気になったり、自分が怪我をしたりして、働くことができなくなると給料が出ません。これでは安心できません。だから僕は、最低限の所得補償をする「ベーシックインカム」の給料制度がいいと思っています。でも、「ベーシックインカムになったらどうする?」と日本の学生に質問すると、「お金がもらえるなら働かない」と言うことがあるんですね。かたや外国の学生は、「生活の心配がないなら思いっきり挑戦できる」という意見でした。このモチベーションの違いも、とても大きな問題だと思っています。

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 それで、評価のことに戻りますと、会社で僕は基本的には褒めていなくて、とにかく感謝だけして、「こんなことできるんだ、ありがとうね」って言うようにしています。僕は「エライね」とかのように、「褒める」って評価のような気がするんです。

 

工藤 褒め方って、実際難しいですよね。

 

植松 難しいですよね。・・・ロケット教室でも、子どもたちが作っているのを見て歩くわけですけども、この時に僕も「きれいだね」とか「すごいね」とかって言わないようにしているんですよ。「この糊の付け方いいね、ばっちりくっついてるよ」とか、他の子たちもなるほどね、と思えるくらいの感じで言った方がいいですよね。・・・「このデザインいいね」って言ったりすると、他の子たちのがっかり感が伝わってくるんですよね。自分のは言われなかったのにという感じになる。

 

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植松 僕は会社を経営しているので「どんな人材が欲しいですか?」という質問をよく受けます。そんな時、僕は「雑談が弾む人。いい文章が書ける人。優しい人」と答えています。雑談が弾む人、いい文章が書ける人は、間違いなく地頭がいいです。人間は言語で思考します。だから、言語がたくさんあるほど思考も深くなっていきます。そして、その頭の良さを生かすのが「優しさ」だと思っています。こういう人たちは、自分からどんどん学び、世の中の問題を解決しようとしてくれます。・・・

 

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工藤 ・・・これまでの教育では何かトラブルが起きると、保護者も教員も「とにかく反省しなさい」となりがちでした。子どもに反省させて、それで終わりということが多かったですよね。

 

植松 でも反省だけだと改善につながらないですよね。僕もロケットが失敗した時、記者会見で失敗の原因と解決策と次のアイデアを話したら、記者から「反省の色がない!」と言われました。「反省の色って何色ですか」って言い返したくなりましたが、さすがに僕も大人ですから言わなかったです(笑)。反省は「お辞儀の角度×お辞儀の時間+涙」だと思ってる人って多いですよね。

 

工藤 自責や他責をせずに、ありのままを受け入れて、どうすれば改善につながるのかを考えていく習慣こそが成長を促すのだと思います。まさに、植松さんの言う「だったら、こうしてみたら」で改善していくということですよね。

 

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植松 僕はこの世からいじめや暴力、児童虐待を本気でなくしたいと思っています。

 人の自信と可能性が奪われない社会を作りたいんです。

 大人もストレスにさらされることが多い時代だから、社会全体が、みんなイライラしているのかもしれませんけど、僕もかつて、会社のお客さんから、商品の不具合のことで、「今すぐ来て土下座しろ!」と言われたりしました。でも、いくら土下座しても問題は解決しないんですよね。僕はいつも「頭はいくらでも下げますが、大事なことは問題を解決するためにどうするかですよね」と問い掛けてきました。

 そもそも、人は、怒ると冷静な判断ができなくなります。相手をやっつけたくなったり、物を破壊したくなったりもします。そんな時はまずは深呼吸をしながら、「結局のところ、自分はどうしたかったのか?」と思い直すといいと思います。そして、合理的で低コストな解決策を考える方がいいんですよね。

 

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植松 日本では、我慢は美徳のように言われがちですけど、これも違いますよね。我慢は苦しい状態に耐えているだけで、頑張って我慢していることは努力だと思ってしまう人が少なくないです。でも実は、それでは何もしていません。耐えているだけです。状態は一つもよくならないです。確かに我慢も必要な時があります。でも、その時にも、「どうやったら解決できるかな」を考えてもがくことがすごく大事です。・・・

 

 

 ところで明日はブログをお休みします。

 いつも見てくださってありがとうございます(*^^*)