前田さんの言う瞑想の効果、「疲れが取れる、落ち着く、運がよくなる」、その通りだなぁと思いました。
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成瀬 日本で昔から言われている言葉だと「無念無想」なんだけど、ピュアな状態に簡単に移行できるようになると、何でも可能になってくるんですよ。
以前、伊藤真愚さんに呼ばれて、何十人かを相手にヨーガ研修みたいになったとき、アイマスクを使ったワークをしたんです。アイマスクをした人が、部屋に立っている何人かの人の間を抜けて向こうの壁まで歩いていくというものです。
その時、僕が見本を見せたんですが、たくさんいる人たちに全然触れないで向こうの壁までスッと行けましたよ。もちろん、アイマスクで目は完全に見えない状態です。
前田 なんでそんなことができるんですか?
成瀬 頭を働かさないんだね、ピュアな状態で。瞑想能力を使っているといえば使ってるんだけど。一般の人から見れば不思議なことというのは確かにありますよ。研修で見本を見せるのは、瞑想の効果に説得力が出るからなんだよね。かといって、あんまり見せ物的にやっているとこの能力は落ちるわけですよ。
前田 それはなんでですか?
成瀬 つまり必要性ということだね。・・・
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成瀬 〝ヨーガってなに?〟というのを、専門的な言葉でこと細かく説明しても、一般の人にはわけがわからないと思うんだけど、そういう説明をする専門家は、ヨーガのことを知らないし、瞑想能力がないんだろうね。僕が聞かれたら、「ヨーガは自分を知ること」って答えるだけ。だって、それ以上でもそれ以下でもないんだもの。その「自分を知る」ために、とても役立つのが瞑想ということになる。だからヨーガ行者は瞑想するというだけです。
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前田さん自身はどうなの?瞑想でどんな効果を実感してるの?
前田 瞑想が役に立つのは、まず頭がスッキリすること。10分か15分でもパッと瞑想状態に入るとさっと疲れが抜けて、頭がスッキリしますね。・・・
それから運がよくなる。土壇場に追い込まれても、必ず乗り越えることができて、ドツボにはまることがなく必ず乗り越えられるんですよね。
成瀬 その理由はいろいろ考えられるけれども、やっぱり俯瞰的に物事を見れるから、視野が狭くなった時みたいに変な選択をしたり、行動をしたりしないからだろうね。ピュアな状態になっていれば、頭で考えなくても自然に感覚に従って最善の選択をしてしまうから。
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前田 疲れが取れる、落ち着く、運がよくなる。瞑想の効果は、まずその三つですね。
成瀬 前田さんが感じた瞑想効果は間違いないですよ。疲れも取れるし、落ち着くということは、瞑想によってもたらされますね。瞑想すると、具体的には呼吸も心拍も安定して、血液循環がよくなるので、健康面での効果は大きいです。その結果、生命力が高められるので、当然運もよくなるということでしょうね。
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どんな場所で瞑想するにしても、「音」は必ずあります。その、音が邪魔だから避けようとか、消そうとすると、瞑想は失敗してしまいます。どんなにうるさい場所で瞑想するにしても、聴こえてくる音はそのままにしておくべきです。
深山幽谷で瞑想する、というと如何にも何にも音のない静かな環境を想い浮かべるでしょうが、実際はその逆です。小動物が動きまわり、小鳥はさえずり、川の流れの音もあるし、風が吹けば木々の枝や葉の音が聞こえます。そういう、いろいろな音が渦巻いている場所だから、瞑想できるのです。もし、音が全くない環境だとしたら、瞑想はできません。
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・・・聴こえてくる音はすべて聴きとるようにします。大きな音、小さな音、身体のなかから聴こえてくる音など、すべて聴きとる、受け入れる、取り込むようにします。
そして音を聴くことに慣れたら、今度はその音を瞑想の役に立てるようにします。その方法は、音が聴こえたときに「音が聴こえることによって、気持ちが落ち着く」という方向に意識を結びつけます。・・・たとえば、いきなり救急車の「ピーポー」という音が聴こえてきたとします。・・・
・・・その「ピーポー」という音を、自分の瞑想に役立てるにはどうすればいいかというと、その救急車を自分が呼んだと考えてください。たとえば家族の一人が危篤状態に陥り、あわてて救急車を呼んだとします。そうすれば、救急車の「ピーポー」という音が聴こえてきたとたんに、イライラするどころか、ホッと安心することになるのです。・・・
瞑想中に聴こえる音というのは、どういう気持ちで聴きとるかで、まったく違った内容になってしまいます。たとえどんな音が聴こえてきても、すべて自分にとって役に立つ音だという認識で聴きとってしまえば、どんどん理想的な瞑想状態に入り込むことができるのです。そして、その「音」が自分の身体の精妙な部分に刺激を与えて、瞑想の深みへと引き込まれる、という解釈をすれば、たとえどんな音が聴こえても瞑想はよい状態に向かうことになるのです。