岡村靖幸 結婚への道

岡村靖幸 結婚への道

 岡村靖幸さんが、結婚をテーマにいろんな方にインタビューしたものをまとめた本です。

 ほんとにいろんな話が出てきて、おもしろかったです。

 

こちらは糸井重里さんとのお話。

P36

岡村 以前、糸井さんとお会いしたときもあんこの話で盛り上がりましたよね。「とらや」のあんこの話で。

糸井 そう、その「とらや」にあんこの作り方を教えてもらったんです。

 ・・・

岡村 研究は相当されましたか。

糸井 まったく(笑)。僕はオタクではないんです。深追いはせず、このくらいのゆるい距離感と湯加減で、あんこを楽しんでいたいんです。だって、「好きだ」って言うと、人って勝負に出たがるじゃないですか。たとえば、「岡村ちゃんが好き」って言うと、「じゃあ、〇年のコンサートは観た?え?観てないの?そんなことも知らないの?」っていう。僕、あれがすごく嫌いなんです。1回しか観たことがなくても、「好き」なのは「好き」なんです。でも、「好き」を売り物にする人って、結局「オレが偉い」っていう話になっちゃう。だから、小豆を追究するために、旅に出て、修業でもすれば、自慢できる要素は増えると思うけど、そんなことをすると、「うれしい気持ち」は消えちゃうんです。眉間にシワを寄せて「あんこってのはなあ!」ってなるんです。ゆらゆらと機嫌良くいられる位置にいるというのが、「ああ、モノにできたな」と思えるんです。「半端だ」というのを恥じることなく、「あんこが好きだ」とやっと言えるようになったなあと。

 ・・・

岡村 ・・・で、いろんなあんこを食べ比べて思うことは、「不思議な魔力があるな」と。たかだか小豆を砂糖で煮たものなのに。小豆だけではこんなに夢中にならないんですよ。でも、小豆に砂糖が足された瞬間、なぜこんなに夢中になってしまうんだろうと。……というのは、男と女、結婚の話とつながるのかなあと(笑)。

糸井 うん、あんこと結婚は通底してるよ、ホントに(笑)。

 

こちらは内田也哉子さん。

P95

岡村 結婚はオススメしますか?

内田 結婚という枠に一度は入ってみる価値はあると思う。とにかく、他人と生活を共にするのは至難の業。相手のすべてを見て、知って、共有して、それでもなお愛せるかというのは、究極の修行なのかもしれない。しかも、その修行を積んだところで、優勝もなければゴールがあるわけでもない。子どもをつくれば不自由なことも多くなる。結局、人間力を試すのが結婚なのかもしれないって思うんです。なにより、自分自身を知る旅になる。期間限定でもなく一生添い遂げる気持ちで挑戦する。それが結婚の醍醐味かなって。

 

こちらは柳美里さん。

P111

柳 私、2週間ほど前に仕事でスウェーデンへ行って、そこでストックホルム在住の日本人女性と出会ったんですね。ユダヤスウェーデン人と結婚をした60代後半の女性。彼女にランチに誘われたので行ってみたら、スウェーデン人と結婚をした60代の日本人男女を2人連れていらっしゃって。彼らがとても興味深い話をしてくれたんです。まず、誘ってくれた60代後半の女性は、いわゆるできちゃった婚だったそうなんです。「子どもができたから結婚する」と言ったら、スウェーデン人たちに「なぜ子どもができたら結婚するの?」と言われたと。それがスウェーデン人の大半の人の感覚だったと。

岡村 欧米ってそうですよね。シングルマザーもごく普通ですし。

柳 そうなんです。で、男性は、60代後半なんですが、スウェーデン人の妻がいるんだけど、途中でフィンランド人女性と浮気をして子どもをもうけたと。でも、その女性は子どもを産んだら失踪してしまい、男性は赤ちゃんを抱えてスウェーデン人妻のところに戻り一緒に育てたと。

岡村 すごいなあ!

柳 そして、もうひとりの60代の女性は、4カ月前にスウェーデン人と結婚したばかりだと。いまはとってもアツアツだそうで、60代だけどセックスもちゃんとしていると。ランチをしながらあけすけに語っていて(笑)。所変われば、じゃないけれど、結婚のカタチも、やっぱりいろいろあるんだなって。

岡村 そういう話を聞くと、日本はフォーマットにとらわれすぎていると思うし、結婚なんてそもそも共同幻想にすぎないなって思いますね。

 

こちらは小山明子さん。大島渚監督のお話が意外でした。

P146

岡村 ・・・大島さんはどんな夫でしたか?

小山 大島というと、テレビで「バカヤロー!」って怒鳴るイメージがあるじゃない(笑)。でも、家ではとってもやさしいの。私に声を荒げることは一切なかった。しかも、彼は私のおしゃべりによく付き合ってくれたんです。藤沢(神奈川県)に家を建ててから、東京から遠いですから、私が仕事からもどるまで、彼は書斎でお酒を飲みながらずっと待っていてくれるんです。で、私は、家でお夜食を食べながら、大島相手にその日の出来事をおしゃべりする。とりとめもない話をずっと。それを彼はずっとニコニコしながら聞いてくれるんです。

岡村 へえ!妻の話を夫は聞かないってよく言いますけれど。

小山 世間の夫婦はそうみたいですね。でも、大島は違うの。彼が言うには、「あなたは寄り道をせずに真っ直ぐ家に帰ってくる。働く女にははけ口がない。だから、僕は話を聞いてあげるんだ」と。働く女として、それはすごくありがたかった。彼は働く女性が好きだったんです。「あなた自身が輝くために女優を続けなさい」と私の背中を押してくれて支えてくれました。だからこそ、私はいままで女優を続けることができましたし、女優であることに誇りをもつようになったんです。最初はやめたいやめたいって思っていたのに(笑)。