ここまでわかった催眠の世界

ここまでわかった催眠の世界 裸の王様が教えるゾーンの入り方

 こちらも保江邦夫さんの対談本です。

 印象に残ったところを書きとめておきます。

 

P92

保江 ・・・夢でいろんなことを教えてもらった科学者も多くて、実は、湯川秀樹先生もそうですし、数学者の岡潔先生もそうです。

 ノーベル賞級のトップクラスの科学者たちは、夢でインスピレーションを得て偉大な発見をしたり、神様から真理を教えてもらっているんだと思いますね。

萩原 やはり、それだけ集合的無意識の宇宙の源のようなところとつながっているんでしょうね。

保江 はい、まさにそのとおりです。

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 素粒子の世界では、宇宙のその他の素粒子からの作用がくりこまれていない電子を「裸の電子」と呼びますが、それに倣えば、僕は「裸の王様」ということですね(笑)。普通の人は、他の人からのいろんな作用がくりこまれているので、知らない間にたくさん服を着させられている。重ね着のし過ぎでしんどいのかもしれませんね。

 

P132

保江 合気道だけではなく、あらゆる剣術の秘伝書、また弓道や禅の世界においても、常に平常心で対処できるような内面の鍛錬が重要だと説かれていますが、それを踏まえた様々な実験からわかったのは、合気をかけているときと「こっくりさん」をやっているときの脳の活性化している部位は同じ前頭前野であるということです。

 そうしたときにはドーパミンがたくさん出ていて、脳波はアルファ波優位の状態だということがわかりました。

 この点に関して、オイゲン・ヘリゲルというドイツ人の哲学者が弓道の師の下で修行しながら禅について学んでいく『弓と禅』(福村出版)という本があります。

 そこに、真っ暗闇の中、師が放った矢が1本目は的のど真ん中に刺さり、続いて放った2本目の矢はなんとその1本目の矢の後ろに当たって真っ二つに割いたという話が出てきます。

 なぜそんなことができるのかを知りたかった弟子に対して、師は、的に当てようとする意図を捨てるということを論し、一切を忘れてただ呼吸に集中したときに、「的と自分が一体になり、そのときに矢を放つと必ず的中する」という極意を教えたところ、やがて弟子もそれを体得できたという話です。

 僕は、これがあらゆる武術の神髄なんじゃないかと思います。

 西洋の古代オリンピックにも同じような話があるんですが、古代オリンピックはゼウス神を祭る聖なる祭典で、血を流すことは禁じられていました。

 ようするに、古代オリンピックは神の託宣によって始まったわけですが、競技そのものがご神事だったので、レスリングなども今のように力による勝敗を争うのではなく、まず相対する二人の男性がともに瞑想状態に入ったそうです。

 そして、それぞれに審判がついていて、各々の選手が瞑想状態に入った時点で旗を上げ、それから二人が組み合うのですが、それは彼らに神様が乗り移った証拠なので神のように美しいフォームで相手を投げなくてはならず、その姿によってご神託を得るというものだったようです。

 ようするに、東洋でも西洋でも武術の極意、神髄は、ただ一方的に相手を打ち負かすというものではなく、相手と同期するというか同調する、あるいは逆にそれを打ち破る、そのかけひきというわけです。

 

P141

萩原 先生は、普段からあまり物事を善悪で判断しないとおっしゃられましたが、まさにそれが、催眠なんですよね。

 普通は、顕在意識で、つい正しいとか間違っているとかジャッジをしてしまいますが、先生の場合はそんな囚われがない裸の王様だから、周りの人たちも同じように裸になりやすいんだと思います。

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 先ほどお話しした吉本武史さんは、・・・天才的な人で、いつも潜在意識で生きていたので、例えば、バスの中に周りの人たちが思わず避けたくなるような険悪な雰囲気の人がいても、平気で傍に行って話しかけるのです。すると相手も穏やかになります。

 また、向こうから恐そうな動物や見すぼらしい物乞いの人がやって来ても、吉本さんはまったく身構えることがなかったそうです。

 自分が身構えなければ、自然な流れのまま物事がスムーズに運んでいきますよね。

 スポーツなどでは、よく「フロー状態」とか「ゾーンに入る」などといわれますが、普通はそのときだけで日常生活に戻るとそれが途絶えてしまいます。

 しかし吉本さんや、保江先生のような裸の王様は、いつもフローでいらっしゃるのでしょうね。

 

P194

保江 ・・・自分がそのときになんとなく感じたことに対して、頭でいろいろ考えずに

素直に動いてみることが大事なのでしょうね。

 コンタクトするには、「なんとなく……」を大事にするといい(笑)!

萩原 確かに、それはいいですね。

 いい換えれば、日頃からできるだけ頭を柔らかくしておくということでしょうね。

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 頭を柔らかくするには、・・・パイロン・ケイティさんの「ワーク」・・・もお勧めです。

 ケイティさんのワークは、「①それは本当ですか? ②それが絶対に本当だとあなたにわかるでしょうか? ③その思考について考えるとき、あなたはどう反応するでしょうか? ④その思いがなければ、あなたは誰でしょうか?」と、自分に対して4つの質問をしながら、自分の無意識の思い込みを解除していく方法です。

 ようするに、意識の使い方をより柔らかくしておくことが大事で、そうすると現実の見え方そのものが変わってくるということでしょうね。